「ある映像作品が視聴者にとってどういう存在かによって、『コンテンツ』と呼ばれたり、『作品』と呼ばれたりする。どういう視聴態度を取るかによって『消費』なのか『鑑賞』なのかが異なってくる。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1947年愛知県生まれ、横浜国立大学経済学部を卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現・ギャガ)に入社、その後キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立、現在はライター、コラムニスト、編集者の稲田豊史さんが書いた、こちらの書籍です。
稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形』(光文社新書)
この本は、2021年3月29日にビジネスサイト「現代ビジネス」に著者が執筆した「『映画を早送りで観る人たち』の出現が示す、恐ろしい未来」、および同年6月、12月に続編として執筆した計9本の記事を元にして書籍化したものです。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.大いなる違和感
2.早送りする人たち
3.セリフで全部説明してほしい人たち
4.失敗したくない人たち
5.好きなものを貶されたくない人たち
6.無関心なお客様たち
この本の冒頭で著者は、若者が倍速視聴する背景として、次の3点を挙げています。
◆ 映像作品の供給過多(安価に大量に視聴できる環境)
◆ タイパ(=タイムパフォーマンス)を求める若者たち
◆ セリフをすべて説明する映像作品の増加
本書の前半では、「大いなる違和感」および「早送りする人たち」について、以下のポイントを説明しています。
◆ つまんない判定なら、あとはずっと1.5倍速
◆ 先に結末を知りたい(ネタバレサイト)
◆「観たい」のではなく「知りたい」
◆ サブスクは1作品ずつが大事にされない
この本の中盤では、「セリフで全部説明してほしい人たち」および「失敗したくない人たち」について考察しています。主なポイントは次の通りです。
◆「わかりやすいもの」が喜ばれる
◆ より短く、より具体的に
◆ 自分の頭が悪いことを認めたくない
◆「オープンワールド化」する脚本
◆ LINEグループの「共感強制力」
◆「旬」が大事
◆ Z世代の個性発信欲
◆ 倍速視聴派のタイパ(タイムパフォーマンス)至上主義
◆ 失敗したくないZ世代の「ネタバレ消費」
◆ 見たいものだけを見たい
◆ 好きなものだけつまみ食い(ピッキー・オーディエンス)
◆ 感情を節約したい、好きなシーンを繰り返し見たい
◆「他人に干渉しない」Z世代の処世術
本書の後半では、「好きなものを貶されたくない人たち」および「無関心なお客様たち」について解説しています。主なポイントは以下の通り。
◆「つかみのインパクト」で視聴者を離さない
◆ 単位時間あたりの情報処理能力の高い人たち
◆ スマホとタブレットの「ひとり観」が倍速視聴を助長した
◆ 技術の進歩で、「不快な制約」からの解放
この本の締めくくりとして著者は、「倍速視聴が現代社会の何を表していて、創作行為のどんな本質を浮き彫りにするのかを突き詰めて考えることにした。」と述べています。
そして「本書は、『消費』と『鑑賞』の視点を行き来しながら綴るメディア論であり、コミュニケーション論であり、世代論であり、創作論であり、文化論である。」と続けています。
あなたも本書を読んで、「映画を早送りで観る人たち」の価値観や時代背景を改めて考えてみませんか。
ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!【2940日目】