「 “ 薬物常用者 ” とされるアメリカ人は2000万人にものぼり、過剰摂取による死亡者が増え続けている。」と指摘している本があります。
本日紹介するのは、アフリカ系アメリカ人として初めてコロンビア大学の自然科学系終身教授についた、カール・ハートさんが書いた、こちらの書籍です。
カール・ハート『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』(早川書房)
この本は、違法薬物に関する誤まった知識を正し、著者やその周囲の人々の体験を語ることで、黒人に拡がっているクラック・コカインのみを厳しく根絶させる薬物政策を取るが故に、社会から取り残された人々に犠牲を強いていることを指摘しているものです。
科学的には、アルコールやタバコを合法として、コカインやマリファナを違法とする根拠は定かではなく、そこに社会のマイノリティ(黒人など)に対する差別や偏見の問題がからんでくる、と著者は言います。
そしてこの本には、粉末コカインとクラック・コカインにかかわる刑罰の重さには科学的に正当化されない差があり、結果的に黒人が多く投獄されてきたことなどが詳しく記されています。
本書は以下の17部構成から成っています。
1.私の出自
2.あの前とあと
3.ビッグママ
4.性教育
5.ラップと報酬
6.薬物と銃
7.選択とチャンス
8.基本軍事訓練
9.「家庭とは憎しみがあるところ」
10.迷路
11.ワイオミング州
12.いまだに単なる一人の黒んば
13.実験参加者の行動
14.胸を突く出来事
15.新たなクラック
16.救いを求めて
17.虚構ではなく事実にもとづいた薬物政策
この本では、著者や家族がマイノリティの黒人として受けて来た、さまざまな差別の例が描かれています。
つまり、そこまでひどいのかと思わずにはいられない著者の人生エピソードを通した人種差別問題を縦糸に、そして薬物に関する科学的な知見を横糸にして、それが本書の全編において貫かれています。
そういう意味で本書は、まさに著者のカール・ハート博士にしか書けない本であると言えるでしょう。
薬物問題は、日本ではアメリカほど拡がりが深刻な問題ではないかも知れませんが、対岸の火事とも言い切れず、あなたもこの本をきっかけに薬物について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を