日本の大手銀行がバブル崩壊後にどのような運命をたどり、5大金融グループがどんな経緯で誕生したのか、その時代を象徴する経営者らが傾いた銀行の再生に奮闘する姿を描いた書があります。
本日紹介するのは、日本経済新聞記者を経て、現在は同社編集局経済解説部編集委員を務める前田裕之さんが書いた、こちらの本です。
前田裕之『ドキュメント銀行』(ディスカヴァー21)
この本は、1995年から2015年までの我が国の金融再編の歴史を描いた書です。
1997年の山一證券や北海道拓殖銀行の破綻に続き、長期信用銀行3行のうち2行、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の2行も経営破たんするという大混乱となった時期です。
不良債権処理が加速する中で、日本経済は「失われた10年」、続いて、「失われた20年」と呼ばれるほど、長期間にわたる景気低迷の時代を迎えることになりました。
本書は、「銀行業とは何か」、「銀行は安全なのか」という疑問に答え、これから銀行とどう付き合うべきかを考えるヒントを提供することを狙いとしています。
著者の前田さんは、日本経済新聞の記者としてほぼ30年間、経済問題などをテーマに取材をし、記事を書いてきた方です。
30年の記者歴のうち10年以上を金融業界を担当してきたことから、取材や記事執筆の過程で、多くの銀行経営者や銀行員たちの肉声を聞き、銀行を舞台に何が起きてきたのかを目の当たりにしてきた、ということです。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.金融危機の入り口と出口
2.消滅した長信銀
3.メガバンクは変身したか
4.進まぬ新陳代謝
5.銀行に未来はあるか
本書を読んでまず感じるのは、金融業界の内部の人間から見ても、たいへんな専門知識と見識を持って書かれた書だということです。
本書が採り上げている金融再編が加速した20年間は、金融界のみならず日本経済の激動期でもあります。
そうした中で何が起こっているのか、大手銀行が合併・再編で集約化され、昔のままの名前で残る大手銀行がなくなるほど、銀行業界で何が起こっているかは外部からは分かりにくいと思います。
それを本書では綿密な取材と、的確な分析によって、見事に解説し、整理して見せていて、驚きを持って読みました。
とくに私自身が、長期信用銀行のトップバンクだった日本興業銀行に22年間在籍して金融業界では通算26年間仕事をしてきましたので、第2章「消滅した長信銀」は興味深く拝読し、様々な思いを持ちました。
「銀行」は「お金」と同様に人間の生活を支える基盤であり、現代社会で、お金を全く使わずに生活するのが不可能なのと同様に、銀行と全く接点を持たずに暮らしていくのは難しい、と著者は言います。
バブル崩壊をきっかけに、不良債権処理の加速と公的資金の投入によって、金融業界は大きな再編の歴史を刻んできましたが、本書はその経緯や金融界内部で起こっていた事実を整理した記録として残す意味で大きな意義ある書であると思います。
あなたも本書を読んで、歴史を踏まえた今後の銀行のあり方や銀行との付き合い方を考えるヒントにしてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を