「高齢者世帯の負担を軽くするための法整備はできていないし、年金問題はとりわけ抜本的な改善が見られない。」「生活保護制度の利用しづらさも相変わらずだ。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1982年生まれ、聖学院大学心理福祉学部客員准教授で、NPO法人ほっとプラス理事、反貧困ネットワーク埼玉代表の藤田孝典さんが書いた、こちらの書籍です。
藤田孝典『脱・下流老人 年金、生きがい、つながりを立て直す』(NHK出版新書)
この本は、高齢者の貧困問題を、特に高齢期の労働という側面にもう一度フォーカスし、社会として何をなすべきなのか考えている書です。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.はじめにー「下流老人」7年目の真実
2.シニアワーカーのリアル
3.この年金額では暮らせない
4.「死ぬまで働く」を強いられる団塊ジュニア、氷河期世代
5.賃労働だけが労働か
6.地域やコミュニティに貢献して生きる
7.社会保障の未来を考える
8.おわりにー歴史的な日本経済の衰退と物価高が加速するなかで
この本の冒頭で著者は、「これからも増え続ける高齢者が幸せで豊かに暮らし、若者も将来はこういう高齢者になりたい、と思えるような社会にしていきたい。残念ながら、現状のシステムはそのような社会にはほど遠く、高齢期は不安に満ち溢れている。」と述べています。
本書の前半では、「シニアワーカーのリアル」および「この年金額では暮らせない」について次のポイントを説明しています。
◆ 70~74歳でも4割の男性、25%の女性が働いている
◆ 雇用でない個人事業のシニア労災が急増
◆ 年金だけでは生活できない元中流会社員
◆ 働くことができなくなる「80歳の壁」
◆ 最低賃金を下回る水準のシルバー人材センターの仕事
◆ 70歳を超える高齢者が賃労働せざるを得ない定年金、無年金の実態
◆ 生活保護受給世帯163万世帯(202万人)の過半数が高齢者
◆ より長生きする女性の低年金問題は深刻
◆ 広がる年金引き下げ違憲訴訟
この本の中盤では、「死ぬまで働くを強いられる団塊ジュニア、氷河期世代」および「賃労働だけが労働か」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 1993年~2005年に学校を出た世代(1971~74年生まれ団塊ジュニア+1975~84年生まれポスト団塊ジュニア)の「ロストジェネレーション」(=「ロスジェネ)」は半分が非正規雇用(2022年現在、30代後半~51歳)
◆ 団塊世代の父が案じる「8050問題」
◆ 避けられない非正規雇用者の低年金
◆ 正規雇用の促進より生活保障対策を
◆ 労働を苦と見るか、喜びと見るかで揺れ続けてきた労働観
◆ 賃労働社会から外れた生き方もある
◆ 我慢して、会社や仕事に「過剰適応」しながら頑張る人
◆ エッセンシャルワーク領域の小さな仕事で輝ける高齢者
◆「ブルシットジョブ」ほど高賃金という矛盾
本書の後半では、「地域やコミュニティに貢献して生きる」および「社会保障の未来を考える」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 協同組合は会社組織とは一線を画したコミュニティ
◆ 地方では、市場経済や貨幣に依存しない生活スタイルも
◆ 私的所有からコモン(共有財産)への転換
◆ 地域で空き家を借りてホームレスに転貸する取り組み
◆「共有地」とは、自分が私有しているものを他社と共有できる場所
◆ 2022年高齢者3621万人、28.9%が2050年は30%超に
◆ 未来志向のシルバー民主主義は可能
◆ 2050年に有権者の過半数が高齢者になる
◆ 利用率の低い生活保護、「生活保護バッシング」の影響
◆「選別主義」より「普遍主義」の方が強みがある
◆ ベーシックインカム(BI)の実証実験
◆ 急がれる「最低保障年金制度」の議論
◆「住宅保障」の実現に向けて、空き家を活用して公共住宅が公共管理に
◆ 欧州は「住宅は社会に引き継いでいくもの」、日本は「住宅は自分で確保するもの」
この本の締めくくりとして著者は、「価値が薄くなった私有地(休耕地・休耕田・放棄地)を価値ある共有地に変えながら、みんなの利益のために、みんなで食糧生産、無償配布の場みかえていく『みやざきフードバンク』の取り組みは、地域課題に取り組む実践例として希望の光である。」と述べています。
あなたも本書を読んで、年金、生きがい、つがりを立て直す「脱・下流老人」の取り組みを知り、希望を持った老後生活に備えていきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2995日目】