「新興国の “ 1万ドル ” 超世帯は、“ 日本ブランド ” を求めている。」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、野村総合研究所の北川史和さんと野村證券金融経済研究所の梅津政信さんが書いた、こちらの書籍です。
北川史和・梅津政信『脱ガラパゴス戦略 台頭する新興国市場の攻略法』(東洋経済新報社)
この本は、世界に向けて閉ざされている日本企業が置かれた状況を、世界から隔離されたために適応力を失い、絶滅の危機にある南太平洋のガラパゴス諸島になぞらえて、いわゆる「ガラパゴス化」について警鐘を鳴らし、提言をしている書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.G20の時代が始まるー金融危機を境に代わる世界経済
2.存在感を増す中国と日本の立ち位置
3.沸騰する新興国市場、立ち遅れる日本企業
4.「1万ドル世帯」を攻略せよ
5.産業別に見る「脱ガラパゴス」戦略
6.世界が「日本」を待っているー構造改革の必要性について
この本の冒頭で著者は、日本企業の「ガラパゴス化」とは以下の4点だと定義しています。
◆ 独自進化: 独自仕様の商品、日本人中心の組織・マネジメント
◆ 海外では別の種が栄える: 海外でデファクトスタンダード形成
◆ 保護されないと生きていけない: 国際競争力がない
◆ 一部の種は絶滅のおそれ: 国内市場は縮小
そうした状況を打開するために著者は、必要なのは「ストーリー」と「戦略」である、と指摘しています。
つまり、成長する新興国市場にかなりの部分を依拠しなければならないため、まず金融危機を境に激変する世界経済を展望し、新興国、とりわけ中国の役割・影響力が高まっていくことを理解することです。
次に、日本で国際競争力があるとされている製造業を中心に、新興国の攻略法、すなわち「脱ガラパゴス化」戦略について、本書では解説しています。
金融危機の背景として、著者は次の3点を挙げています。
1.過剰流動性
2.金融監督
3.米国金融機関の高レバレッジ経営
2008年のリーマンショックを機に、翌2009年は世界経済が戦後初のマイナス成長となり、G20サミットが恐慌に歯止めをかけ、とりわけ迅速で巨額の財政出動をした中国経済の回復が世界経済を牽引しました。
その後、中国経済は輸出主導から内需主導に転換しつつあり、「白物家電」などの需要で新興国が急成長しています。
こうした動きに対して日本企業は出遅れていて、韓国企業の巧みな広告戦略と現地化に圧倒されている、と著者は指摘しています。
そこで本書では、新興国の所得増加を分析し、「1万ドル世帯」は日本企業の顧客になり得る、と提言しています。
具体的には、中国、ブラジル、インド、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアの新興7ヶ国における2020年時点での世帯当たり年間所得分布の予測を示しています。
また、新興国を攻略するキーコンセプトとして、次の3つを提示しています。
◆ 日本の世界観を売る: 新しいライフスタイル(日本での経験を売る=ブランド訴求)
◆ それでもちょっとした工夫: リーゾナブルプライスで現地化×標準化(ものづくり)
◆ マネジメントレベルの現地化: 「模倣困難」な経営システムの構築
例えば、世界観を売っている日本企業として、TOTOの高級路線や資生堂の高級ブランドを紹介しています。
その他、ホンダ、パナソニック、セブンイレブン、ワコール、ヤクルト、トヨタなどの事例を取り上げています。
続いて本書の後半では、産業別の「脱ガラパゴス戦略」として、以下の業界を採り上げて分析しています。詳細についてはぜひ、この本を手に取ってお読みください。
◆ 携帯電話
◆ 自動車
◆ サービス業
◆ 農業
◆ 環境・エネルギー
◆ ゲーム
最後に、日本企業が「脱ガラパゴス化」によって世界へ出ていくために、以下の「戦略の構造改革」を提言しています。
◆ 「日本文化」を卑下するな
◆ 「ブルーオーシャン」を目指せ
◆ 「あこがれのストーリー」を描こう
◆ 「技術」と「文化」の両輪で日本を売り込め
また、これ以外に「構造改革」として、以下の点を挙げています。
◆ 教育の構造改革: グローバル化の本質「日本文化」を語れること
◆ 日本人の構造改革: 現代人の「緩さ」がグローバル化を阻害
◆ 企業の構造改革: 求められるリーダーシップ、M&A戦略、現地の利益を考える
この本は、リーマンショックの直後である2009年に書かれましたが、現在でも日本企業の課題はあまり変化していません。
あなたも本書を読んで、「脱ガラパゴス戦略」について、真剣に考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を