「団塊世代の足元に、人生の “ 断崖絶壁 ” が広がっている。認知症、がん、人間関係、お金等々、問題は山積。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1948年生まれの団塊世代、出版社勤務を経て著作活動に入り、社会時評を中心に、翻訳、評伝なども手がける大江瞬さんが書いた、こちらの新刊新書です。
大江瞬『団塊絶壁』(新潮新書)
この本は、団塊世代を代表するというつもりで、著者の大江さんが、問題が山積する同世代の人々の中で、「うまくやっている人、やれない人は何が違うのか」を解き明かしています。
団塊世代を代表する著名人のビートたけし、堺屋太一、弘兼憲史、ガッツ石松、山折哲雄、曽野綾子のほか、医師や各界の賢人、達人に総力取材してまとめています。
本書は以下の11部構成から成っています。
1.「人間関係」が左右する認知症
2.色恋も虐待もある「老人ホーム」
3.子や孫を喰らう「がん特効薬」「最先端医療」
4.億万長者と無一文の分かれ目
5.「死ぬまでセックス」の効用と副作用
6.誤解だらけの「安楽死」
7.病院で死ぬか、自宅で死ぬか
8.「墓」「葬式」は本当に必要か
9.男性ホルモンが幸福の源になる
10.「世代ヒーロー」たちの反・団塊論
11.「おたおたするな」とたけしは言った
この本の冒頭で著者は、古希を迎えた団塊世代は、深刻な問題を多く抱えていると指摘しています。
認知症、貧困老人、健保の破綻・・・など、追い詰められた団塊世代の先にあるのは、目もくらむばかりの絶壁。と言うことで、まさに「団塊絶壁」という言葉が、著者に突然浮かんだそうです。
長生きのみにしがみつくのではなく、善く生きること、そしてどうやって善く死ぬか、死ねるかをしっかり考えるのが本書のテーマだ、と著者は述べています。
まず最初に、認知症やその介護の実態について、詳細な事例が具体的に綴られていて、参考になります。なかなか認知症の詳細がコンパクトに具体性を持って語られることはないので、知りたい情報が分かって有益です。
そして、なかなか実際には知られることの少ない「老人ホーム」の実態も、分かりやすくリアルに描かれていて、驚かされます。
さらに、以下のような、これまで議論するのもタブーとされてきた高齢者をめぐる問題についても、団塊世代という800万人ものボリュームの人たちが直面することとして、大きな問題提起をしています。
◆ がん特効薬や最先端医療の高額な公的費用負担
◆ 億万長者と貧困老人の格差と二極化
◆ 死ぬまでセックスの効用と副作用
◆ 安楽死の是非、尊厳死との違い
◆ 在宅死を希望すること
◆ 墓や葬式の必要性と最近の潮流
◆ 男性ホルモンの効力
これらの問題は、これまで正面切った議論がなされず、正確な情報や知識も持たない人たちがその場になって慌てるというのが現実でした。
そういう意味で、この本の問題提起は大いに参考になります。
また最後には、団塊世代のヒーローたちが、それぞれの団塊論を語っていて興味深いです。
あまり知られていなかった大橋巨泉さんの死の直前状況や、元ツカサグループ代表の川又三智彦さんの半生、立川談志さんの自ら戒名を付けた話など、詳細な取材による紹介が、とても参考になります。
そのほか、「団塊世代」の名付け親である作家の堺屋太一さんの見解、読書家として知られるライフネット生命の創業者・出口治明さんの見解も興味深いものがあります。
この本の最後で著者は「人間は使い捨てカメラのようなものではあるまいか。」と述べています。12、24、36枚撮りという規格はそれぞれの寿命。カメラはその枚数分だけ撮影し終えると、そのまま現像所へ送られます。
カメラは解体され、フィルムだけが取り出されて、写し撮られた元の風景は、カメラの以前からずっとそこにあり、カメラがなくなっても形を変えながらそのまま存在し続ける、ということです。
私たちの人生も、一定期間だけ存在するもので、周りの自然や世界は、私たちが生まれる前から、そして死んだ後も、そのまま存在し続けるでしょう。
あなたも本書を読んで、団塊世代が直面する多くの問題から、もう一度人生について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を