「8050問題」が語られるようになって久しいが、NHKスベシャル取材班によると、高齢化が進んだことで問題が ”最終局面” に差し掛かっている、と警鐘を鳴らしている本があります。
本日紹介するのは、長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチームであるNHKスペシャル取材班が書いた、こちらの書籍です。
NHKスペシャル取材班『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』(宝島社新書)
この本は、2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当したNHKスペシャル取材班が、放送できなかった部分や放送後の取材を加えてルポルタージュとして書籍化したものです。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.プロローグ
2.ある、ひきこもりの死
3.全国に広がる「ひきこもり死」
4.扉の向こうの家族
5.親の死を言い出せない「子」たち
6.命を守るための模索
7.エピローグ
この本の冒頭で著者は、「全国を取材すると、背景は異なれど、親の死後に助けを求めることなく死に直面した人たちは驚くほど多くいた。そして、異口同音に『自分は必要とされていない』と語るのだった。」と述べています。
本書の前半では、「ある、ひきこもりの死」について紹介しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 年間50万円で暮らしていた50代のひきこもり死
◆ 支援や入院を拒絶して接触が途絶えて命を救えず
◆ ひきこもり死の放送に、「明日は我が身だ」という共感
◆「助けを求めてほしい」と願う支援する側
この本の中盤では、「全国に広がるひきこもり死」および「扉の向こうの家族」について、次のポイントを説明しています。
◆ 全国の「ひきこもり相談窓口」1392カ所へのアンケート調査
◆「ひきこもり死」で亡くなった方は、2019年の1年間で少なくとも72名
◆ どうすれば救えたのか、いまもわからず、支援員も傷ついている
◆ 栄養失調で亡くなる方は「セルフネグレクト」
◆ 支援を拒否する50代男性
◆「お金がなくなったら死ぬ」と支援を拒むひきこもり男性
◆ 就労だけがゴールなのか、苦悩する支援員
◆「自分は社会に必要ない」と絶望する
◆ 本人が拒否するのに、行政が入院収容することはできない
◆ 働いていない負い目(後ろめたさ)から食事をとらなくなる
◆ 封印した過去があったが、つながりを求めていた
◆ ジャーナリスト・池上正樹さんの知見
本書の後半では、「親の死を言い出せない子たち」および「命を守るための模索」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 親の死を言い出せない「ひきこもり」子たち
◆ 親の遺体と半年間生活した男性
◆ 働いていないことへの負い目
◆ 相次ぐ遺体放置の事件
◆「おせっかいの支援」に取り組む千葉県茂原市の自立相談支援機関「長生ひなた」
◆ じっくり関り、興味や関心を探る
◆ 自宅以外の「居場所」の大切さ
◆ 背中を押すのではなく「支える」
この本の締めくくりとして著者は、「ひきこもり状態に陥るのは『自己責任』ではなく、『社会全体で取り組むべき課題』として捉えて施策を進めるべきであり、自治体等がひきこもり支援に取り組みやすい環境整備を加速化」すべきと提言しています。
あなたも本書を読んで、「中高年ひきこもり」や「ひきこもり死」の実態を知り、社会全体の問題として改めて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2903日目】