「超高齢社会に対して根本的に向き合うということは、すなわち、新しい社会構造をデザインするということにほかなりません。」と述べて、超高齢社会におけるシニアの社会参加と就労を支援するICTについての研究を紹介・解説している本があります。
本日紹介するのは、1978年熊本県生まれ、東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科博士課程修了、複合現実感、ヒューマンインターフェースを専門として、超高齢社会をICTで拡張するジェロンテクノロジーの研究に取り組んでいる、東京大学先端科学技術研究センター専任講師、理化学研究所革新知能統合研究センターチームリーダー、工学博士の檜山敦さんが書いた、こちらの書籍です。
檜山敦『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命』(平凡社新書)
この本は、新しいシニア就労の形である「モザイク型就労」とそれを実現するICTを紹介し、「高齢者クラウド」の研究開発現場からの速報とビジネス化へ向けた考察をまとめ、持続可能な超高齢社会ができあがることで開かれる明るい未来のビジョンを描いている書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.シニア就労のススメ
2.シニアの日常とICT
3.モザイク型就労
4.高齢者クラウドの実用化
5.未来へ向けて
この本の冒頭で著者は、「高齢者をひとくくりに『支えられるだけの存在』と見なして、医療福祉や介護問題にすべての力を注いでよいものか、そこから考え直してみたい」と述べています。
本書の前半では、「シニア就労のススメ」および「シニアの日常とICT」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 前期高齢者と後期高齢者とは身体的健康がまったく異なる
◆ 前期高齢者の95%、後期高齢者の70%はアクティブシニア
◆ ターマン博士の「社会とのつながりが多い人の寿命が長い」という研究
◆ 就労や社会参加が長寿につながるサクセスフルエイジングのポイント
◆ ICTを活用した新しい働き方を提供する企業、ITCはシニアと親和性の高い働き方
◆ アクティブシニアからスマートシニアへ(「新老人の会」スマートシニア・アソシエーション 牧壮代表)
◆ メロウ倶楽部 創設メンバー・若宮正子
◆ シニア情報生活アドバイザー制度
◆ ICTを学ぶことは認知症予防に
◆ シニアのICT利用、情報発信を広げる
この本の中盤では、「モザイク型就労」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ モザイク型就労(➀時間モザイク、空間モザイク、スキルモザイク)
◆ 時間モザイクは、ゲーム要素を加える(ゲーミフィケーション)
◆ 空間モザイクは、ネットワークやロボットを活用した遠隔講習、若者を見守る就労
◆ 仕切るモザイクは、仕事とシニア人材のジョブマッチング
◆ ジョブコーディネーターの暗黙知をAIが学習するシステム
本書の後半では、「高齢者クラウドの実用化」および「未来へ向けて」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 65歳以上ホワイトカラーの2/3が未就労
◆ シニア層の働き方は「雇用」の概念とは異なる働き方に(フリーランス、インディペンデント・コントラクター)
◆ 高齢社、サーキュレーションの仕事とシニア人材のマッチング
◆ 二極化するシニア就労市場の真ん中ボリュームゾーンのホワイトカラーシニア層が課題
◆ ICTの活用でロングテール市場のシニア労働力を「生きがい就労」にマッチング
◆ 人材スカウター(ハイスキルジョブからの領域拡大、オントロジー構築)
◆ GBER(➀ジョブマッチング、②趣味仲間探し、③職業訓練⇒就労支援)
◆ 全国規模のICTインフラ整備とシステム統合
◆ アクティブシニアを超アクティブシニア化するアプローチ
◆ 高齢者クラウドで変わる定年後ライフスタイル
この本の締めくくりとして著者は、課題先進国の日本が明るい超高齢社会を切り拓くために、「ICTによるシニア就労の活性化と人口ピラミッドのバーチャルな再逆転を目指した、高齢者クラウド」の研究開発という意義を繰り返しています。
本書で提唱しているICTを活用した「高齢者クラウド」は、拙著『定年ひとり起業』、『定年ひとり起業マネー編』(ともに自由国民社)で提唱しているコンセプトと共通する部分が多く、心から共感しました。ぜひ併せてお読みください。
あなたもこの本を読んで、アクティブシニアがスマートシニアとしていきいきと就労する「超高齢社会2.0」について考え、実践してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2752日目】