仏教という宗教の一番ベースになる考え方と、それに基づく仏教徒たちの活動の様子をオンライン授業として発信した講義録が書籍化されました。
本日紹介するのは、1956年福井県生まれ、京都大学工学部工業化学科、文学部哲学科卒業、文学博士、インド仏教学者で、現在は花園大学教授の佐々木閑さんが書いた、こちらの書籍です。
佐々木閑『仏教の誕生』(河出新書)
この本は、仏教という、一般社会とは違う生き方もあるということを伝えるために書かれました。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.仏教誕生の地 インド基礎知識
2.なぜ仏教は生まれたのか
3.釈迦が目指す世界
4.仏教の修行方法
5.仏教という出家社会
6.修行者の暮らし
7.仏教の定義
この本の冒頭で著者は、「私がこの講義で伝えたいのは、仏教という、一般社会とは違う生き方もあるということです。」、「いろいろな生き方を模索し、探していくと、そこにはそれぞれの人に合った価値観の場所が見つかるはずです。」と述べています。
本書の前半では、「仏教生誕の地 インドの基礎知識」および「なぜ仏教は生まれたのか」について、以下のポイントを説明しています。
◆ インドの地理的な特徴とバラモン教世界(カースト制度)の広がり
◆ バラモンのほとんどはアーリア系(インド・ヨーロッパ語を話す人)
◆ 仏教はバラモン教に対抗して、「反バラモン教」を旗印に出てきた宗教
◆ 「梵」をベースとしたさまざまな神、聖典「ヴェーダ」、バラモン教(およびヒンドゥー教)
◆ バラモン階級は神に最も近い人々
◆「梵」と呼ばれる神格化された絶対的な宇宙パワー
◆ 聖なる言葉「ヴェーダ」
◆「カースト」と呼ばれる「生まれながらの血筋や家柄で一生が決められていく」という生き方
この本の中盤では、「釈迦が目指す世界」および「仏教の修業方法」を説明しています。主なポイントは次の通り。
◆ 釈迦の死後、仏教が広まる一方、反仏教のヒンドゥー教が台頭
◆ ヒンドゥー教がカースト制度を主張する物理的根拠は「汚れの理論」
◆ 釈迦の教えは「努力で幸せになるという欲求を捨てよ」
◆ 仏教は生きることに絶望を感じている人たちの受け皿
◆ 仏教の修業は「自分の心の中を変えていく」こと
◆ 具体的な方法は、精神の集中=「瞑想」
◆「瞑想」は人類の文化を作ってきた最大の原動力
◆ ほぼありとあらゆる創造的活動の源泉に、瞑想という特別な行為が作用している
◆「瞑想による智慧の獲得」が仏教における重要な目標
◆「戒」とは、良い悪いを判断せず、自然に良い方向へ行動する習慣を身につけること
◆「戒」と「瞑想」と「智慧」という三要素を、この順番で体得し、煩悩の消えた安楽な状態へ
◆ 上記三要素は仏教用語で「戒・定・慧」
本書の後半では、「仏教という出家者会」および「修行者の暮らし」について、以下のポイントを紹介・解説しています。
◆ 出家とは、一般社会での生活を放棄して、釈迦が設定した生活スタイルへ身を投じること
◆ 正しい出家組織は「継続」する、仏教は2500年継続している
◆ 出家社会と一般社会は出入り自由
◆ 出家修行者は「戒・定・慧」の「三学」というプログラム(カリキュラム)を実践する
◆ 仕事をせずに修業を続ける出家者の生きる糧は「托鉢」(または「布施」)
◆ 養ってもらうための条件は、➀世間的欲望の放棄、②誠実な修行生活を続ける、③質実端正な暮らしぶり、の3つ(=「律」)
◆「戒」は自己を変えるための個人の習慣、「律」は出家僧団を維持していくための規則
◆ 僧侶は葬儀の主宰者ではなく、人々に幸せをもたらす存在
この本の締めくくりとして著者は、「仏教の定義」を説明しています。ポイントは以下の通り。
◆ 仏教徒は「仏・法・僧」なり
◆「仏」とは、「ブッダ」すなわち、お釈迦さま、「ブッダ」を目指して修業しているのが「菩薩」
◆「法」とは、お釈迦さまが80歳で亡くなるまでの人生で説き広めたもの
◆「僧」とは、「律」に基づいて運営されている出家者たちの組織=出家僧団(=サンガ)
本書は、もともと「仏教哲学の世界観」というテーマで行うはずの講義を、オンライン授業となったことに伴い、仏教という宗教の一番ベースになる考え方と、それに基づく仏教徒たちの活動の様子を話す形に変更したものを書籍化したものです。
講義録ゆえ、口語体で分かりやすく書かれており、ぜひ「仏教の神髄」を学ぶのにお薦めです。私自身も今年4月から毎月、「仏教美術」を学んでいるため、とても興味深く読み、仏教に対する理解が深まりました。
ぜひ「仏教の考え方」や、修業、瞑想などのコンセプトに興味ある方にお薦めの一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【2609日目】