「約1億7,500万人の巨大市場と若い労働力を持つバングラデシュ。日系企業の進出も広がる注目市場で、ビジネスを成功させるには、経済だけでなく、政治、社会、歴史、文化、人々の価値観を理解することが欠かせません。」― インドと東南アジアの間に位置し、豊富な若年人口を抱えるバングラデシュは、これからの成長が期待される国の一つです。本書は、その知られざる実像をマンガと図解によって、ビジネスから歴史、政治、社会、文化、現地生活まで幅広く学べる入門書です。

本日紹介するのは、1980年東京都生まれ、大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、東京外国語大学准教授などを経て、現在は立教大学異文化コミュニケーション学部准教授として、開発社会学、国際協力論、バングラデシュ地域研究を専門とする日下部尚徳(くさかべ・なおのり)さんが監修し、広島大学大学院教育学研究科博士後期課程修了、比較教育学、開発社会学、バングラデシュ地域研究を専門とし、現在は立教大学特任PD(日本学術振興会特別研究員PD)田中志歩(たなか・しほ)さんほかが編著した、こちらの書籍です。

日下部尚徳監修・田中志歩ほか編著『決定版 バングラデシュのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)

日下部尚徳さんは、『自分ゴトとして考える難民問題 SDGs時代の向き合い方』(岩波書店)、『バングラデシュを知るための66章』(明石書店)などの著書があります。

また田中志歩さんは、『アジア教育情報シリーズ3巻 南・中央・西アジア編』(一藝社)、『新型コロナウイルス感染症と人類学』(水声社)などの執筆に携わっています。

この本は、約1億7,500万人という巨大な人口と若い労働力を持ち、日本企業からも注目されるバングラデシュについて、ビジネスに必要な基礎知識だけでなく、政治、外交、歴史、社会、文化、人々の価値観、さらには現地で生活する際の実践的な情報まで、マンガと図解を使って分かりやすく解説しています。

日本では、バングラデシュというと「人口密度の高い国」「縫製産業の国」「貧困や自然災害に悩む途上国」といったイメージがまだ強いかもしれません。しかし実際には、豊富な若年人口を背景に経済発展を続け、インフラ整備や都市化が進み、新しい消費市場としての存在感も高まっています。

本書は以下の7部構成から成っています。

1.親日国バングラデシュの魅力

2.バングラデシュ理解のきほんのき

3.バングラデシュの政治と外交

4.変貌するバングラデシュ

5.バングラデシュビジネスへの進出

6.バングラデシュの社会と文化

7.実践!バングラデシュ生活

 

本書の前半では、「親日国バングラデシュの魅力」「バングラデシュ理解のきほんのき」「政治と外交」を中心に、以下のポイントを説明しています。

◆ バングラデシュは約1億7,500万人の巨大な人口を抱え、しかも若い世代が多いことから、労働力と消費市場の両面で大きな可能性を持っている

◆ 日本とバングラデシュの間には長年にわたる国際協力や経済交流の蓄積があり、日本に対して好意的な感情を持つ人も多く、日系企業にとって重要な強みになる

◆ バングラデシュを理解するためには、現在の国境だけを見るのではなく、ベンガル地方の歴史、英国植民地支配、インド・パキスタン分離、そして1971年の独立に至る歴史を知る必要がある

◆ 政治や社会を考える際には、イスラム教徒が多数を占める国であることと同時に、ベンガル人としての言語や文化への強いアイデンティティを理解することが欠かせない

◆ 南アジアと東南アジアを結ぶ位置にあるバングラデシュは、インド、中国、日本などとの関係を含め、地政学的にも重要性を増している

 

この本の中盤では、「変貌するバングラデシュ」「バングラデシュビジネスへの進出」を中心に、急速に変化する経済と市場について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ バングラデシュ経済を支えてきた代表的な産業が縫製・アパレル産業であり、豊富な労働力を生かして世界の衣料品サプライチェーンの重要な拠点となっている

◆ 一方で、今後の成長を考えるうえでは、縫製産業だけに依存するのではなく、製造業の多角化、デジタル産業、サービス業など、新たな成長産業を育てることが重要になる

◆ 人口規模の大きさに加え、所得水準の上昇や都市化が進むことで、中間層を中心とした消費市場としての魅力も高まっている

◆ 日系企業にとっては、低コストの労働力だけを見るのではなく、現地の商習慣、人材マネジメント、制度、インフラ、文化や価値観まで理解したうえで長期的な事業戦略を立てることが重要である

◆ バングラデシュ進出を成功させるには、日本の常識やビジネス慣行をそのまま持ち込むのではなく、信頼できる現地パートナーを見つけ、人的ネットワークを築きながら市場に適応していく姿勢が求められる

 

本書の後半では、「バングラデシュの社会と文化」「実践!バングラデシュ生活」を中心に、現地の人々と実際に付き合い、暮らすために知っておきたいポイントを紹介しています。

◆ バングラデシュでビジネスをするうえでは、経済指標や市場規模だけでなく、宗教、家族、人間関係など、人々の生活を支える価値観への理解が欠かせない

◆ イスラム教を中心とした宗教的な習慣は日々の生活やビジネスにも関係しており、食事や服装、礼儀、ラマダンなどへの基本的な理解と配慮が必要になる

◆ 家族や親族、人とのつながりが社会生活の中で大きな意味を持っており、日本とは異なるコミュニケーションや意思決定のあり方を理解することが信頼関係につながる

◆ 首都ダッカをはじめとする都市では、経済成長とともに生活環境が急速に変化する一方、交通渋滞やインフラなど、成長過程ならではの課題も抱えている

◆ 実際に現地へ行き、人々と交流し、食事や街の雰囲気を体験することで、統計数字やニュースだけでは見えてこない「リアルなバングラデシュ」を理解することができる

 

本書を読んで私が最も注目したのは、バングラデシュ「低賃金の生産拠点」としてだけ見るのではなく、約1億7,500万人の人口を持つ巨大な消費市場として捉える視点です。

世界経済を長期的に考える場合、「人口」、とくに「若い人口」がどこにいるのかを見ることは極めて重要です。

日本では少子高齢化と人口減少が進んでいますが、世界に目を向ければ、南アジアを中心に若い人口が豊富で、これから所得水準が上昇していく国々があります。バングラデシュは、その代表的な国の一つでしょう。

日本は長年、政府開発援助(ODA)インフラ整備などを通じてバングラデシュとの関係を築いてきました。

また、成田~ダッカの直行便が2026年7月末から再開したことも、日本からバングラデシュを訪れる心理的・時間的な距離を縮める動きとして注目されます。

本書は、バングラデシュへの進出・投資・取引を検討しているビジネスパーソンはもちろん、成長するアジア経済に関心がある方、国際協力や新興国ビジネスを学びたい方、そして「次に成長する巨大市場」を自分の目で確かめたい方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

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では、今日もハッピーな1日を!【4190日目】