「AIは神にも征服者にもなりません。シンギュラリティは来ません。」と断言し、しなしながら「人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。」と予測している本があります。
本日紹介するのは、国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長で、一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長の新井紀子さんが書いた、こちらの書籍です。
新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)
この本は、「東ロボくん」と名付けた人工知能を我が子のように育て、東大合格を目指すチャレンジを試みてきた数学者の著者が、AIには何が出来て何が出来ないのかを明らかにし、AIに多くの仕事が代替された社会で何が起こるのかを論じた書です。
本書は以下の4部構成から成っています。
1.MARCHに合格-AIはライバル
2.桜散る-シンギュラリティはSF
3.教科書が読めない-全国読解力調査
4.最悪のシナリオ
この本の冒頭で著者は、世の中でAIと言われているものは、多くが「AI技術」のことで、人間と同じ「知能」というわけではない、と指摘しています。
AIとAI技術はきちんと区別されるべきで、本書では、AI技術をAIと表現するのに対し、「真のAI」という表現を使って記述しています。
2011年にスタートした「ロボットは東大に入れるか」と名付けた人工知能プロジェクトは、大きな反響を巻き起こし、国際的な名誉ある賞も受賞していますが、2016年の全国センター模試では、偏差値57.1にまで進化しました。
全国の国公立大学172のうち、23大学30学部に合格できるレベルに達しています。私立大学に関しては、584大学の中で512大学1343学部2993学科で合格できるレベルです。
この後、この本では、AIはあくまでも人間が認識している事象を数式に翻訳して、四則演算という計算をする機能を持っているだけであることを、例を挙げながら説明しています。
「東ロボくん」の入試問題への挑戦については、数学や世界史などでは、数式に翻訳しやすいために高得点を取ることができたものの、英語と国語についてはそれが難しく、苦戦しているということです。
また、本書の中で繰り返し著者が指摘しているのは、人間の仕事がすべてAIに取って替わられることはあり得ないし、シンギュラリティも来ない、としていますが、半分以上の仕事はAIに代替されて仕事がなくなってしまう、ということです。
そして、コンピューターは、人間が常識として判断することを、同じように処理することは難しいので限界があるが、一方で現在の子どもたちは、文章の読解力が不足し、危機的な状況である、と指摘しています。
さらに、偏差値と読解力を調査した結果によれば、「基礎読解力が低いと、偏差値の高い高校には入れない」と結論付けています。
それは当然のことで、基礎読解力がなければ、教科書だけでなく、試験問題の問題文も速く正確に読めないからだ、と本書では述べています。
つまり、基礎的読解力は人生を左右する、と言えるほど重要なのです。では、何が読解力を決定するのでしょうか。
全国2万5000人を対象に実施した読解力調査で分かったことは以下の通りです。
◆ 中学を卒業する段階で、約3割が表層的な読解もできない
◆ 学力中位以上の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
◆ 進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度
◆ 読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
◆ 読解能力値は中学生の間は平均的には向上し、高校では向上していない
◆ 読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある
読解力を養うために有効な方法を解明する科学的な研究は今のところないそうです。
こうした状況の中で著者の新井さんが目指すのは、「中学卒業までに全員が教科書をよめるようにして卒業させること」だそうです。
あなたも本書を読んで、AIが私たちの仕事の半分以上を奪ってしまう社会の中で、教科書を読めるという「基礎的読解力」の重要性を、改めて感じてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を