書評ブログ

『60歳からの知っておくべき地政学』

「“地政学を知らずして、これからの時代を生き抜くことはできない”」――そんな切実な警鐘を鳴らす一冊があります。

本日紹介するのは、1955年東京都生まれ、東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業、博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)に入省し、理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして政策に深く関与し、現在は株式会社政策工房会長、嘉悦大学教授として政策提言を続ける人気経済学者・高橋洋一(たかはし・よういち)さんが書いたこちらの書籍です。

高橋洋一『60歳からの知っておくべき地政学』(扶桑社新書)

 

経済のプロとして知られる著者が、本書では “世界の力学” を読み解く「地政学」をわかりやすく解説。特に、2025年米大統領選や日本の政権交代を見据えた国際秩序の転換期において、私たちがどう生きるべきかを提示している書です。

 

本書は以下の7部構成から成っています。

1.「戦争を知る」ことが地政学

2.「イデオロギー」の冷戦時代

3.「中国経済」「ロシア軍事」包囲網時代

4.「機構」から読み解く新冷戦時代

5.国益に繋がる経済・通商政策

6.新冷戦時代の外交・安全保障

7.喫緊に迫る「危機」と未来の「希望」

この本の冒頭で著者は、「戦争史と地理的条件を分析するのが地政学」であると述べています。


本書の前半では、「戦争を知ることが地政学」および「イデオロギーの冷戦時代」について、冷戦時代から続く世界の構造的な対立を紐解きます。主なポイントは以下の通りです。

◆ イデオロギー対立の裏にある“地理と資源”の論理

◆ 米ソ冷戦が終わっても、世界は依然として分断されたまま

◆ 現代の「新冷戦」は、情報・経済・AIを軸に展開している

◆ 地政学は“戦争学”ではなく“国家生存の戦略学”である

◆ 日本が巻き込まれるリスクは「地理的宿命」から避けられない


この本の中盤では、「中国経済、ロシア軍事 包囲網時代」および「機構から読み解く新冷戦時代」など主要国の動向を地政学的に分析し、経済安全保障や通商政策との関連を解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ 中国は“経済”で世界を取り込み、ロシアは“軍事”で圧力をかける

◆ 米国の分断は「トランプ復権」で新たなフェーズへ

◆ アジア版NATO構想が現実味を帯びる中での日本の立ち位置

◆ 経済・通商政策こそが“国益”を左右する最大の武器

◆ インド・東南アジアの台頭が新しいパワーバランスを生む


本書の後半では、日本がこれから直面する「新冷戦時代の外交・安全保障」および「喫緊に迫る危機と未来の希望」を描き出します。主なポイントは以下の通りです。

◆ 日本の防衛力強化と経済安全保障の一体化が急務

◆ 技術・資源・移民政策が国家存続のカギを握る

◆ 世界秩序の転換期における “リアリズム外交” の重要性

◆ 「戦争を避ける」ためにこそ地政学を学ぶべき

◆ 60歳からの学びが、日本の未来を守る “市民の力” になる


本書の魅力は、複雑な国際情勢を「地政学×経済」の両軸でわかりやすく整理しながら、読者一人ひとりに “当事者意識” を促す点にあります。
特に「60歳からの知っておくべき」と題している通り、人生100年時代において、年齢に関係なく “世界の構造変化を自分ごととして考える” ことの大切さを教えてくれる一冊です。

地政学は国家の話ではなく、「これからの暮らしをどう守るか」という私たち自身の学びでもあります。激動の国際社会を生き抜くために、必読の教養書と言えるでしょう。

 

ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のYouTubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ

では、今日もハッピーな1日を!【3888日目】