レイ・オルデンバーグ氏は、1932年生まれ、アメリカの都市社会学者だ。ミネソタ州立大学マントカ校を卒業し、ミネソタ大学にて社会学の修士号および博士号を取得した。
その後、複数の大学で教鞭を執っていたが、本書の原書 『The Great Place 』 を刊行して以来、「サードプレイス」 づくりに取り組む国内外の行政や企業、市民のコンサルタントとして活躍した。
本書でいう 「サードプレイス」 とは、仕事や家庭の心配事を脇に置いて、気の合う仲間と息抜きをして、楽しい会話を愉しんだりするだけのために、人々が集まる場所だ。
実は、そうした場所こそが、地域社会や草の根民主主義の核になっている。本書は、以下の14の構成から成るが、大きくは3部に分かれている。第Ⅰ部が1~4から成り、「サードプレイス」 の機能、特徴、物理的な条件が述べられている。
第Ⅱ部では、5~10において、「サードプレイス」 の具体的実例が紹介される。ドイツ、イギリス、フランスなどだ。また第Ⅲ部では、11~14において、「サードプレイス」 の政治的・社会的な課題と、その解決策が提示されている。
1.アメリカにおける場所の問題
2.サードプレイスの特徴
3.個人が受ける恩恵
4.もっと良いこと
5.ドイツ系アメリカ人のラガービール園(ガーデン)
6.メインストリート
7.イギリスのパブ
8.フランスのカフェ
9.アメリカの居酒屋(タヴァーン)
10.古典的なコーヒーハウス
11.厳しい環境(ハビタット)
12.男女とサードプレイス
13.若者を締め出すということ
14.めざすは、よりよい時代・・・・・と場所
「サードプレイス」 とは、第一の 「家庭」 でも、第二の 「職場や学校」 でもない、第三の 「とびきり居心地よい場所」 で、コミュニティの核にもなっている場所のことだ。
古代ローマの公共広場(フォルム)、夥しい数のフランスのカフェ、イギリスの伝統であるパブ、オーストリアの首都ウィーンにあるカフェハウス、ドイツのビアガルデン、などなど。
著者のオルデンバーグ氏は、そうした場所がアメリカの都市や郊外には無いと、危機感を募らせていた。しかし、本書に刺激を受けて1998年に、シアトルから北に20 km のワシントン州レイクフォレストパークに 「サードプレイス・ブックス」 が開業した。
また、世界的なカフェ・チェーンに成長した 「スターバックス」 は、「サードプレイス」 をその店舗およびビジネスモデルのコンセプトとしている。
ノマドワーキングを実践する私も、「サードプレイス」 の居心地の良さは、日々、実感している。とくにスターバックスは、日本でも 「居心地の良い」 空間として、多くのビジネスパーソンの支持を受けている。
本書は、情報社会の現代において、ますます重要性を増している 「サードプレイス」 の原点になっている書だ。原書が刊行されてから24年の歳月を経てようやく日本語に翻訳された本書を、できるだけ多くの方々に読んでもらいたい。