飯島裕子氏は東京生まれのノンフィクション・ライターで、専門紙記者から雑誌編集者を経てフリーになった。人物インタビューやルポルタージュを中心に執筆活動を行っている。
本書は、従来の50歳代以降のホームレスとは違う層、具体的には20~30歳代の若者ホームレスに焦点を当て、約50人の若者ホームレスにインタビューをして纏めたものだ。
著者によれば、若者ホームレスには精神障害や発達障害など、病を背負った人も多く、対人関係をうまくコントロールできない。一度、社会のレールから外れると、現代の雇用環境では復活するのが困難で、負のスパイラルに入ってしまう。
定職を得られないから収入や生活が安定せず、ついには定住も難しくなる。住所不定では、採用のための履歴書すら記入ができず、正社員の道は遠い。
バリバリと働いていた若者でさえも、ふとしたキッカケで職を失い、正社員への復帰の道が閉ざされ、負のスパイラルに落ち込む人は多い。不運な怪我、病気、人間関係から来るストレスと心の病い。
現代はあまりにも簡単に道を外れてしまう環境にある。就職難民、派遣切り、ホームレス、孤独死と、転落のコースは片道切符だ。敗者復活を不可能にする社会構造と、グローバル競争による厳しいビジネス環境。
本書は、若者ホームレスへの直接インタビュー取材により、その実態や本質を炙り出している。現代社会や資本主義の矛盾を解明するキーになる事実がいくつも記され、示唆に富んでいる。
ビジネス界で厳しい競争の中、人材採用や育成に関わる人々に、本書はぜひ読んでいただきたい。また、職を求めて活動する若い人々にも一読を強く薦めたい。