若林栄四氏は、東京銀行の為替ディーラーとして活躍した後、独立してニューヨークに在住していた。為替相場の見通しが当たるということで、マスメディアでも多く取り上げられ、伝説のディーラーとも言われる。
相場の予測手法は黄金分割法というユニークなもの。為替相場だけでなく、株式相場、商品相場(原油・金)の見通しにまで幅広く応用されている。本書も黄金分割法を使った著者の相場予測を述べているのが中心だ。
まず為替だが、ドル/円は2012年4月の74円で円高トレンドは終焉し、2014~2015年に135円近辺まで円安が進むと予測する。2013年12月現在、103円まで円安が進んできたので、円高トレンドは終わったと見てよく、あと1~2年で135円という予測が当たる可能性はある。
長期的には、2025年8月に200円をめざす円安トレンドだという。先般、紹介した斉藤洋二氏も 『日本経済の非合理な予測』 (ATパブリケーション)で、175円の円安で200円も視野に入ってくると予測しているので、ふたりの長期予測はずばり一致する。
私も中長期では円安と予測している。最大の根拠は、米国は2050年には人口が1億増加して4億人を超えるが、日本は8000万人レベルまで減少すること。とくに生産年齢人口、すなわち労働力人口が減るのは経済成長には致命的だ。
もう一つの根拠は、米国のシェールガス革命。エネルギー資源を自給できる見通しが立った米国へは製造業がどんどん帰ってきている。自国を出ていく日本とは対照的だ。米国の通貨、ドルが強くなるのは自然な流れだろう。
本書では、ユーロ/円は2012年1~2月で100円割れしたあと、2014年4月に145円まで戻るトレンドになる。2013年12月で141円まで戻ってきたので、これば見事に的中しそうだ。
中長期ではユーロはドルに対しては弱くなるが、円も弱くなるので、ユーロ/円は横ばいになるという。したがって、3極通貨では、ドル・ユーロ・円の順に強くなるというのが本書の予測だ。
株式については、日米とも上がった後に暴落と見ている。日本で10,000円割れ、米国で10,000ドル割れということだが、2013~2014年にそこまでの暴落はなさそうだ。
原油相場は170ドルまで急騰した後に暴落、金も長期上昇トレンドの後、一旦下がるとの予測だ。これはまだ何とも言えない。
なぜか当たる黄金分割法。相場は心理など、さまざまな要因で動くので、予測の指針のひとつとして、黄金分割も知っていて損はない。ビジネスパーソンにはぜひ本書の一読を薦めたい。