竹中平蔵氏は、日本開発銀行から経済学者に転じ、慶応義塾大学で教鞭をとった。小泉純一郎氏が首相に就任した時に、経済政策のブレインとして竹中氏に支援を依頼し、竹中氏は政界に転じることになる。
小泉政権は郵政民営化を成し遂げるために様々な手法を駆使した。手本としたのは、親米を外交政策の基本として5年間の長期政権を維持した中曽根康弘元首相の行政改革および民営化路線。
小泉政権のスローガンは「改革なくして成長なし」ということで、規制緩和と不良債権処理に邁進したが、その理論的支柱と先兵となって粉骨砕身の活躍をしたのが竹中氏だ。
本書は、著者のハーバード大学留学経験、経済財政担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣としての閣僚経験、および国会議員としての政治経験を踏まえ、若者に向けた国際感覚を磨くための啓蒙書だ。
グローバル化とIT革命による情報化が急速に進む中で、世界の変化は著しく速く激しくなっている。競争の時代に勝ち残るためには、「世界人」になることは不可欠だ。
とくに印象的で私が感銘を受けたのは、トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』およびリチャード・フロリダの 『クリエイティブ・クラスの世紀』という対照的な二冊を時代の変化を象徴する名著として採り上げた点。
この二冊をすぐに読んで、私はたいへんな感銘を受けたのだが、これらの書はまた別の機会に紹介しよう。いずれにしても、本書は竹中氏の神髄がわかる一冊として、ぜひ読んでもらいたい書だ。強く薦めたい。