松野恵介氏は、大学卒業後に京都の老舗呉服問屋に入社し、若くしてリストラにあい、心身ともにボロボロになった、という。その後、勉強してマーケティング・コンサルタントとして独立した。
お客様との 「つながり」 をつくりだす、コネクションマーケティング理論を構築し、人気コンサルタントになった。松野氏は、全国の温泉地や商店街の活性化や大学の講師などで活躍中だ。
本書は、そうした松野氏のマーケティング理論や実践手法を余すところなく披歴した書だ。「魔法の自己紹介」 というタイトルになっているが、その真髄や手法は、そのまま会社紹介や商品紹介に通じる内容だ。
本書の構成は以下の通りだ。
1.自己紹介を変えれば、あなたも変わる
2.記憶に残る!自己紹介のシナリオづくり
3.優秀な人ほど、自己紹介が下手なわけ
4.自己紹介がうまい人は、「売り方」 もうまい!
本書によれば、自己紹介のポイントは以下の2点だ。
◆ 誰に何ができるのか?
◆ それは、どうしてできるのか?
これをベースにシナリオをつくればOKだ。あと、隠しテクニックとしては、その中に欠点や失敗談を入れること。注意する点は、「自分視点」 ではなく 「他人視点」 ということだ。例えば、次のような形だ。
1.私は、〇〇(職業)をしているわけではない。
2.これまでの、△△ という経験を活かしつつ
3.お客様に、◆◆ のお手伝いをしているのだ
これが、「誰に何ができるか」 という具体的な紹介法だ。お客様の何のサポートができるかを決め、◆◆ アドバイザーの肩書をつくるということだ。次に、その仕事をしようと思ったきっかけを探してみる。
それは人生の失敗談や、逆に一番、嬉しかったことかも知れない。挫折を経験して、そこから立ち上がった経験などが説得力があるかも知れない。
それが、「それは、どうしてできるのか」 ということだ。つまり、きっかけになったことを見つる。そのときのことをエピソードで書き出す。そしてエピソードに関連するマイナス面を書き出す。
以上をまとめると、自己紹介のシナリオを構成する要素は次の5つになる。
1.お客様の何のお手伝いができるかを決める
2.◆◆ アドバイザーの肩書をつくる
3.きっかけとなったことを見つける
4.そのときのことをエピソードで書き出す
5.エピソードに関連するマイナス面を書き出す
これらを考えて書き出したら、あとはつなげて文章にするだけだ。さらに加えるとすれば、キャッチコピーを書く、およびアドバイザーとしての実績を書く、ということだ。これで、「また会いたい」 と思われる自己紹介になるだろう。
会社の案内パンフレットや商品の販促チラシもまったく同じ原理だ。とにかく大切なのは、「会社の視点」 ではなく、「お客様の視点」 で書くことだ。その原理は以下の2点。
◆ お客様に何ができるのか?
◆ それが、どうすればできるのか?
お客様の視点に立つことで、共感・共鳴が生まれる。共感・共鳴の積み重ねが、お客様とのつながりをどんどん深くしていき、信頼関係がつくられるのだ。
関係性ができるとどうなるか。継続的な情報発信によって、お客様自身が積極的に動いてくれるようになる。「リコメンド力」 がつくということ、つまり、推薦する力だ。「これ、いいですよ。」、とか 「ここ、いいですよ。」 とか、「この人、いいですよ。」 といった口コミの発生だ。
継続した情報発信によって、そういう関係性をつくり出すこと。それが経営を鑑定させることになる。どんな仕事の、ただモノを売ったり、サービスだけを届けているのではない。モノやサービスを通じて、何か別のものを届けているのだ。
本書は、起業を考えている人には、ビジネスの原点を学ぶ上で珠玉の一冊だ。心から推薦したい。