書評ブログ

松澤喜好『英語耳ドリル』(アスキー・メディアワークス)

松澤喜好氏は、英語の発音指導で定評があり、著書の『英語耳』がベストセラーとなってブレイクした。元々は、主催するWebサイト「英語・発音・語彙」が注目を集め、アルクのサイトに掲載されたのがキッカケだ。

 

私は、アルク本社(永福町)で行われた松澤氏の英語発音セミナーに参加して、その人柄の良さ (気さくで明るい方です!) に感激した。発音指導もうまいし、発音を躊躇する我々をリラックスさせるのがとても上手だった。

 

本書は、ベストセラーの『英語耳』の実践ドリル版で、英語の歌を繰り返し歌うことで発音をマスターしようというもの。選曲が絶妙で、何度も繰り返し歌っていると心にジ~ンと響くいい曲だ。

 

とくに最初の曲「Fly Me to the Moon.」は、ほんとうに素晴らしい曲で、何度でも歌いたくなる。松澤氏によれば、この歌の歌詞の中に、日本人が苦手とする子音の発音が全て出てきて、知らぬ間に発音が上達してしまうらしい。

 

正確な発音をマスターするには、真似て発音することを繰り返すしかなく、楽しみながらそれをするのは歌が一番ということだ。音読を繰り返すのは結構、強い意思と根性がいるが、歌なら繰り返すのが楽しい。

 

私も、この「Fly Me to the Moon.」は毎日、何度も繰り返して歌った。発音が上達したかどうかは自分では分かりにくいが、子音を意識して強く発音できるようになった。すると不思議と英語らしく聞こえる。またリスニングの苦手意識も徐々に消えていった。

 

実は、正確に発音できればリスニングも正確にできる、というのが松澤氏の理論。「発音できない英語は聞き取れない」ということだ。これは確かにその通りで、発音の上達とリスニング能力の向上はある程度、同時に進む。

 

TOEICのリスニングが弱い人はまず発音の練習を本書で行うことを薦めたい。英語の名曲を楽しみながら「英語耳」を作れる一冊として、ぜひとも推薦したい名著だ。