昨日に続き、戸田智弘氏の働く理由シリーズの第二弾を紹介したい。前回のシゴト論に次いで、今回は99の至言に学ぶジンセイ論だ。
「人は何のために働くのか。」 本書によれば、「働く理由」 = 「お金」 + 「やりがい」ということになる。かつては、「食べるために働く」 あるいは 「欲しいものを買うために働く」 という答えが一般的だった。
ただ、豊かになった現代では、「お金」 だけを働く理由にはできなくなっている。衣食住の確保は、よほどの窮乏生活でなければ可能だ。
「やりがい」 というのは、「お金」 意外の働く理由であり、現代ではこちらの方が重要となっている。本書には、いたるところに 「つながり」 や 「関係」 といった言葉が出てくる。
人間は、他者とのつながりや関係を通じて得られる他者からの承認によって、自分という存在を証明できる。
本書のねらいは、働くことを 「やりがい」 という視点から整理することになる。前著に続いて、多くの先人たちの名言の中から、単なる 「仕事論」 にとどまらず、「幸福論」 や 「人生論」 にまで及ぶことになる。
私が感銘を受けた至言をいくつか紹介して、本書の魅力を要約することとしたい。まずは、詩人ゲーテの次の言葉だ。
「生活はすべて次の2つから成り立っている。
1.したいけれどできない
2.できるけれど、したくない 」
できることとやりたいことを両立させることは難しい。それを仕事にできれば最高だが、そういうことは珍しい。
次に、石川達三の次の言葉。 「幸福は決して怠惰の中にはない。安逸の中に幸福はない。 ・・・(中略)・・・ 幸福は常に努力する生活の中にのみ有るのだ。」
石川の言う 「努力をする生活」 とは、すなわち仕事をする生活である。ヒルティは 『幸福論』 の中で、「休息によって中断されるだけの、絶え間ない有益な活動の状態」 を、「幸福」 と呼んでいる。
ヒルティの次の言葉は、もっとはっきりと仕事と幸福の関係を述べている。 「ひとは幸福になりたいと思うならば、何よりもまず正しい仕事をさがすがよい。失敗の生涯はたいてい、その人が全然仕事を持たないか、仕事が少なすぎるか、あるいは正しい仕事を持たないことに、その根本の原因がある。」
まだまだ先人の至言は続くのだが、最後に牧師のチャールズ・キングズリの言葉を挙げておこう。
「われわれは、安逸と贅沢が得られなければ
人生の幸福はあり得ない、と考えているが、
実際に人を真に幸福にするものは、
何か我を忘れて取り組める事柄を持つことである」
働く理由を探求し、人生論や幸福論にまで高めていきたい人に、本書は最適だ。前著のシゴト論よりもさらに一歩進めたジンセイ論として、本書もぜひ一読を薦めたい示唆に富んだ書だ。