ビジネスに成功する原理原則は、業種は違っても同じだという思いを、私は最近強く感じるようになりました。とくに個人事業や中小企業から大きく成長する事業には共通するコンセプトがあります。
経営参謀という立場で、何百冊もの経営書を長年読み続けていると、日本の経営者ではやはり、稲盛和夫さんの経営哲学に少なからぬ影響を受けます。
稲盛さんは京セラを創業し、KDDIの共同創業者となり、さらに経営破綻したJALの再建を短期間で成し遂げたカリスマ経営者です。
『京セラフィロソフィー』と呼ばれる経営哲学を生み出し、『アメーバ経営』という最強の経営手法を創り出した方で、次世代の本物の経営者を育成するため、「盛和塾」を主宰しています。
その「盛和塾」の塾生として、稲盛さんの経営哲学を全く異なる2つの業界で実践し、成功に導いた経営者がいます。そこで本日、推薦したい本はこちらです。
坂本孝 『俺のイタリアン、俺のフレンチ – ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方』 (商業界)
著者の坂本孝さんは、1940年山梨県甲府市生まれで、オーディオ販売や中古ピアノ販売などいくつかの事業を経て、1990年に「ブックオフ」を創業し、大成功した事業家です。
ブックオフは16年間で1,000店舗まで拡大し、書籍業界の流通に革命をもたらしました。しかしながら坂本社長はある事件で、ブックオフの経営から退くことを余儀なくされ、ハワイでセミリタイア生活となります。
そんな最中に、尊敬する稲盛和夫さんがJALの再建を引き受けたことに刺激を受け、ビジネスに復帰し、2009年に飲食業に参入しました。
2011年9月に、東京・新橋に1号店「俺のイタリアン新橋本店」をオープンするや、連日行列ができる大繁盛店になりました。その後も、「俺のイタリアン」、「俺のフレンチ」を次々に開店し、成長しています。
坂本社長が展開する飲食店のコンセプトは、立ち飲み酒屋と星付きレストランを合体させたものです。つまり、星付きのレストランで修業した一流シェフが、いい食材をふんだんに使って、リーゾナブルな価格で提供する、というもの。
食材の原価率が60%を超えるという徹底ぶりで、お客様は高級レストランに負けない美味しい料理を、驚くような低価格で食べられる、という店です。
その代わり、店は狭くて立ち飲み、2時間限定で客席回転数を上げて固定費を抑えるビジネスモデルです。坂本社長は、この本の中で「事業づくりで大切なことは競争優位性である」と述べています。
他社が真似できない「競争優位性」を作り上げることで参入障壁を築いていく、ということです。そこには、稲盛さんが説く「利他」 の心や、「仲間のために尽くす」といった経営哲学があります。
この本を読むと、中古本流通で革命を起こした「ブックオフ」と外食産業に革命を起こしつつある「俺のイタリアン」、「俺のフレンチ」といった違う2つの業種・業態でも、経営の原理原則は全く同じだということがよくわかります。
「事業は仕組みで勝って、人で圧勝する」というのは、ブックオフ時代から坂本社長が経営理念としている考え方ですが、稲盛さんの経営哲学がその原点になっています。
どのような事業でも、お客様の立場に立ったビジネスモデルを作り上げ、商品やサービスを提供する人材を育成していくことが成功していくための原理原則ということでしょう。
事業を成功させるための本質が、具体的な事例を通して分かる本書を、皆さんに心から推薦します。
それでは今日もハッピーな1日を。