佐藤達郎氏は、一橋大学社会学部を卒業後、広告代理店のアサツーディ・ケイに入社し、コピーライター、クリエイティブ・ディレクターを経て、2004年に青山学院大学にてMBAを取得した。そのご、博報堂DYに移籍し、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを経て、多摩美術大学教授となった。
本書は、社畜として会社組織の論理でイヤイヤで働き続けることでもなく、独立起業してフリーになるのでもない、第三の働き方を提言している書だ。佐藤氏はそれを「モジュール型ワーキング」と呼んでいる。
「モジュール型」とは簡単に言うと、収入を得るための仕事を複数持ち、安定した収入源の仕事も維持しながら、リスクヘッジや楽しみ・やりがいなどの追求のための収入源となる仕事を別に持つ、という働き方だ。
本書によれば、「モジュール型ワーキング」には、以下の4つのタイプがある。
1.専門性追求拡張タイプ
2.本業キープ拡散タイプ
3.憧れ中心下支えタイプ
4.テーマ中心雑食タイプ
それぞれ、すでに実践している方々がいて、本書ではそれぞれ実践例を挙げて、分かりやすく紹介している。まず、1の専門性追求拡張タイプとしては、著者もそうだが、ほかに女性健康医学者の本田由佳さんを挙げている。
本田さんは株式会社タニタに15年間在籍し、その後慶応義塾大学の特任教授や病院の研究コーディネート、セミナー講師など、女性の健康医学分野で幅広く活躍している。
次に、2の本業キープ拡散タイプとして、フリーのマーケターでありながら、ダンサーとしてもビジネスを展開する三宅正氏を紹介している。三宅氏は本業を持ちながら趣味のダンスを追求し、ストリートダンスのプレーヤー、インストラクターとしても活躍している。
3の憧れ中心下支えタイプの実践例は、飲食店経営者の阿部光峰氏だ。阿部氏は大手広告代理店で8年間コピーライターとして仕事をしてきたが、憧れだった飲食店経営に転換した。会社に勤務しながら試行錯誤の準備を進めて目途が立ってから独立し、今では3店の飲食店を経営する。
最後4のテーマ中心雑食タイプとしては、本ブログでも著書を採り上げた安藤美冬さんが紹介されている。安藤さんは大手出版社に勤務した後、ソーシャルメディアで自分のブランディングをして発信を続け、スマホ向け放送局MCや多摩大学の専任講師、商品企画、アイドル審査員など多様な分野で活躍している。
安藤さんのテーマは、著書『冒険にでよう』 (ディスカヴァー21)によれば、フリーランス、ソーシャルメディア、ブランディング、ノマドの4つだが、時代の流れや要請に合わせて、テーマも変化させていくべきだ、と安藤さんは言う。
私も安藤さんの「テーマを決めた働き方」や「ソーシャルメディアでの発信力」には非常に注目していて、今後の多くの若者の生き方の指針になるのではないかと思う。本書の推薦を表示カバーに書いている四角大輔氏とともに、数多くの人々の支持を受けるようになってきたと感じる。
本書は最後に、幸せの基準として、以下の3点を掛け合わせることを示している。
1.収入の確保
2.やりがい
3.働き心地
私もまったく同感だ。理想の働き方を模索しているすべての会社員、仕事をする人々に、四角大輔氏とともに本書を心から推薦したい。