「論理思考」と対になる考え方として、「マーケット感覚」を身につけようと呼びかけている人がいます。月間200万PVのアクセスを集める超人気の社会派ブロガーちきりんさんです。
ちきりんさんは、一般のビジネスパーソンや世間で常識と言われている考え方に、新たな視点から疑問を呈し、様々な提案をブログで発信して大きな反響を集めています。
これまで主に金融の世界で語られていた「マーケット感覚」を、新たに定義しなおして、これからの世界で生きていくために必須の「稼ぐ力」だと提唱しています。そこで今日はちきりんさんが2年ぶりに書き下ろし発売したてのこちらの新刊を紹介します。
ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)
この本は、最近の10年とこれからの10年という時代を「あらゆるものが市場化する社会」と展望し、そうした社会で生きるための必須の力として「マーケット感覚」というものを提唱しています。
ちきりんさんの言う「マーケット感覚」とは、「市場の中で何に価値があるかを見極める能力」です。簡単に言うと「今後何がいくらで売れるのかを予測する力」ということです。
著者は、就活市場や婚活市場の例を挙げて、かつては「相対取引」だった「就職活動」や「結婚活動」がインターネットの発達によって全国幅広くから容易に選択できる「市場取引」に構造変化した結果、活動自体が様変わりしている、と指摘します。
市場化された社会では、特定少数の圧倒的勝者が出る一方で、取引の成立しない敗者が生まれるなど、極端な二極化が起こります。こうした「市場化」という変化が今後あらゆる分野・ジャンルで起こる世の中になってきたということです。
しかも日本全国というレベルではもはやなく、インターネットは簡単に国境も超えてしまうので、世界中との市場競争に晒されることになります。そうした中で「何に価値があるのか」を見極める「マーケット感覚」は何よりも重要な「生きる力」となります。
この本は以下の7部から構成されています。
1.もうひとつの能力
2.市場と価値とマーケット感覚
3.市場化する社会
4.マーケット感覚で変わる世の中の見え方
5.すべては「価値」から始まる
6.マーケット感覚を鍛える5つの方法
7.変わらなければ替えられる
この本の巻末には「さいごに」というまとめと参考文献が記されています。このラストで紹介されている徳島県における市場化されたビジネスも大変印象的です。
また参考文献として掲載された書籍リストを見るだけで、著者の中で「時代の変化」を思考する力がしっかりと湧き上がっていることが推測されます。
この本で「マーケット感覚」が大切と提唱している事例はとても分かりやすく説明されていて、私には納得感がありました。併せて時代の変化をひしひしと感じることができ、「定年前起業」を薦めるビジネスをスタートした立場からも、とても心強く思った次第です。
最後に、この本の中心となる上記6に記載された「マーケット感覚を鍛える5つの方法」を挙げておきます。
1.プライシング能力を身につける
2.インセンティブシステムを理解する
3.市場に評価される方法を学ぶ
4.失敗と成功の関係を理解する
5.市場性の高い環境に身を置く
とくに4番目の「失敗と成功の関係を理解する」は、これからの市場化する社会では大切です。「失敗」は「成功」と対比される概念ではなく、むしろ「成功」の途上にある、という考え方です。
まずやってみて、失敗から学んで、やり方を変えてチャレンジする先に成功がある、という著者の考え方に強く共感を覚えました。「起業」で成功する人の行動パターンとは、例外なくそうした経過を辿るものだと思います。
では、今日もハッピーな1日を!