井上裕之氏は、歯学博士、経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタントで、医療法人社団いのうえ歯科医院理事長だ。井上氏は週の前半3~4日を北海道帯広で歯科医師として働き、残りの週末2~3日を東京で講演・取材・出版打ち合わせなどの仕事をして過ごしている。
井上氏は、講義やセミナー、講演会の受講、あるいは教材購入など、自己啓発に約1億円も投資したという伝説のカリスマ講師、コンサルタントだ。本書は、そうした膨大な勉強から著者が編み出し、提唱している 「ライフコンパス」 の考え方をベースに組み立てた人生の成功法だ。
「ライフコンパス」 とは、成功法則の権威ジョセフ・マーフィー博士による 「潜在意識」 と、経営学の権威ピーター・ドラッカー博士による 「ミッション」 を、井上氏が総合させた考え方だ。
まず本書の冒頭に、小説家で政治家の山本有三氏による次の有名な言葉が紹介されている。
たったひとりしかいない自分の
たった一度しかない人生を、
本当に生かさなかったら、
人間、生まれてきた甲斐がないではないか
たしかな足跡を刻み、世に名を残した人の生き方には、「生きる意味」、「生きる証」 と呼ぶにふさわしい、しっかりとした核がある。
また、世間的な 「成功」 から解放され、本当に 「したい」、「なりたい」 と思うことをめざす。たとえ世間的な 「出世」 のコースから外れても、本当に生きたい生き方を貫いていく。一体どうしたら、こんな生き方ができるのだろうか。
誰のものでもない 「自分の価値観」 で進む人生は、覚悟が求められる。その半面で、自己ベストを求めて成長を続けるアスリートのような充足感、生きている実感が得られる。
本書では、「自分の価値観」 を磨く30のリストを挙げているが、それを以下の5つの分野に分けて掲載している。
1.自分らしく思い通りに 「仕事」 する
2.自分らしく思い通りに 「挑戦」 する
3.自分らしく思い通りに 「お金」 を使う
4.自分らしく思い通りに 「人間関係」 を築く
5.自分らしく思い通りに 「人生」 を生きる
それぞれのリストに、偉人や有名人の名言を紹介して掲載している。印象に残ったリストをいくつか紹介しておこう。
1.自分の 「好き」 を大切にしていますか?
2.壁にぶつかったら、別の方向から攻めていますか?
3.やりたいことを、すぐ始めていますか?
4.本をたくさん読んで、知性を磨いていますか?
5.「学び」 のために、お金を使っていますか?
6.社会に出てから、「ワンランク上の学び」 をしていますか?
7.相手の人間性を多角的に見つめていますか?
8.相手の立場に立って考え、行動していますか?
9.意識して、ひとりの時間を作っていますか?
10.自分の道を、誇りを持って歩いていますか?
いずれも心に響く、素晴らしい 「自分の価値観」 を磨くリストだ。本書では、様々な成功者の言葉や生き方が紹介されているが、とくに私の印象に残った人をひとりだけ紹介しよう。
米国の経済雑誌 『フォーチュン』 が2013年の最優秀ビジネスパーソンに選んだイーロン・マスク氏。彼は、「スティーブ・ジョブズを超える男」 といわれるほど高く評価されている。
イーロンは、南アフリカ生まれで、高校時代に母親の故郷カナダに渡り、その後アメリカのペンシルベニア大学に進んだ。イーロンは、「世界を変えるようなことをしよう」 と考え、インターネット、持続性のあるエネルギー、宇宙ビジネスの3つを選んだ。
やがて民間のロケット会社を立ち上げ、NASAのロケット開発コストの100分の1以下のコストでロケットを作り上げることに成功した。イーロンの成功は、ブレない信念を持つことの大切さを教えてくれる。
本書は、著者である井上氏の膨大な自己啓発の成果と職業経験から、「自分の価値観」 で生きる人生を送るために、大切な考え方や 「軸」 が惜しげもなく記されている。
「自分が主役の人生」 をめざす、全ての人たちに、本書を心から推薦したい。