６０社の顧問をつとめる６５歳の元銀行マンが新分野に果敢に挑むベンチャー起業家７人を紹介した本があります。「ミスター顧問」の異名（私が命名！）を持つ森部好樹さんはまさに「スーパー顧問」です。
そこで本日は森部好樹さんの『７人の起業家』シリーズ第二弾となる、こちらの本を紹介します。
森部好樹『続・７人の起業家』（日経ＢＰ社）
この本は、１９４８年佐賀県生まれで東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行し、新規開拓記録など、数々の伝説を残した森部好樹さんの３冊目の著作です。
冒頭で森部さんの経歴と起業家としての実績が紹介されていますが、まさに異色の起業家です。５０歳代になってから家電量販店のビックカメラに出向して「オンデーズ」というメガネ会社を社長として立ち上げます。
様々なアイデアでメガネ業界に旋風を巻き起こした後に、旧興銀系の広告代理店である「共同広告社」の再建を果たします。ここでインターネット広告に目をつけ、若きＩＴ企業家との出会いが森部さんの人生を変えました。
６０歳代のビジネス経験と人脈が豊富な森部さんと２０歳代・３０歳代の若きネット起業家とは抜群に相性が良くて、お互いに欠けているものを補完することで大きなパワーを発揮しています。
森部さんにはＩＴの知識や新たなビジネスモデルを生み出す発想力はありませんが、若き起業家たちには人脈やビジネスモデルの価値を正しく評価する眼が養われていません。
相互に欠けている部分を補い合うことで、次々に新しいビジネスが展開していくようになりました。著者の森部さんは、事業を成功させるための３要素を以下のように挙げています。
１．ファンディング（資金確保）
２．オリジネーション（商品やサービス）
３．ソリューション（販路）
ファンディングはカネ余りの現在、公的支援の制度なども充実していて、あまり出る幕がないとのこと。若手起業家はオリジネーションに優れ、尖った会社はたくさんあると言います。
彼らに不足しているのはソリューション、つまり販路開拓でつまずいている会社が多いということです。そこで旧興銀時代に培った人脈が豊富な「森部顧問」の登場になる、というわけです。
森部さんのやり方は、尖った会社の社長を最低３人引き連れて、大手上場会社の経営者に引き合わせて、短時間でプレゼンをさせます。１回のアポイントに最低３人の若手社長を連れて行くので、１人目がダメでも、２人目、３人目で興味を持ってもらい、誰かの話が実を結ぶ、といったやり方です。
森部さんのスケジュールは顧問先企業の社長にはグーグルカレンダーで公開されていて、森部さんは毎日、スマートフォンを操りながら分刻みで大手企業の経営者とのアポイントを梯子します。
６５歳になって働き方も大きく変え、仕事は月曜から木曜の４日間のみで、金曜から日曜は富士山の見える大磯町の自宅で畑仕事をしてリフレッシュすると言います。
そうすることで、新たなビジネスのアイデアが次々と生まれると言います。現在はロッキングホースという会社組織の形態にして６０歳代の人も雇って「顧問業」に邁進しています。
本書で紹介されている「尖った会社」を経営する若き起業家７名は以下の人たちです。
１．ツインズ社長・梶原隆司（家電ＯＥＭから靴ひもの開発）
２．ウィルゲート社長・小島梨輝、専務・吉岡諒（本物のＳＥＯ事業）
３．鎌倉新書社長・清水祐孝（インターネット葬儀会社）
４．アウトソーシングテクノロジー社長・茂手木雅樹（エンジニア派遣でものづくり）
５．医療法人社団翔友会理事長・綿引一（磁気刺激によるうつ病治療）
６．イー・ライフ・グループ社長・小川義行（機能訓練特化のデイサービス事業）
７．あしたのチーム社長・高橋恭介（クラウド版人事評価システム）
これらの若手経営者はいずれも独自の事業理念を持ち、社会を変革する志を持って挑戦する経営者です。それぞれ既存の価値観や社会体制、業界規制などと闘いながら新たな道を進んでいるところが共通しています。
森部さんが「尖った会社」と呼ぶ、斬新なビジネスモデルを生み出す若き起業家の情熱や志に共感しているのではないかと思います。社会も大きく変化し、そうした新しいニーズを捉えた事業がユーザーの支持を受けつつあります。
この本の最後には、著者の森部好樹さんとジャーナリストの蔦信彦さんとの対談が収められていて、両者の若手起業家やベンチャー経営者を見る「暖かい眼」が印象的です。
ほかに森部さんの著書は以下の２冊があります。いずれもお薦めです。
皆さんも本書を参考にして、変化する時代の中で大きく伸びる事業を起こしてみませんか。「ミスター顧問」の森部さんが注目して力強い支援が得られるかも知れません。
では、今日もハッピーな１日を！
