ブランディングに関する書籍は数多く出版されていますが、個人やスモールビジネスに最適な教科書は少ないのが実情です。そうした中で、大企業から中小企業、個人商店・事業者まで、ブランディングの基本を整理した書は貴重です。
本日は、1冊だけで「ブランディングの基本」が習得できる、こちらの本です。
安原智樹『この1冊ですべてわかるブランディングの基本』(日本実業出版社)
この本は、「ブランディング」についての様々な論点を、いろいろな視点から俯瞰した一冊です。基本から応用編まで、様々なステージの読者に対応しているのが特徴でしょう。
まず本書の冒頭で著者は、「ブランドは、消費者の頭の中にあるという点で商品とは異なる」と述べています。お客さまは、商品を選ぶ際に、頭の中でつねに「選択」を行っています。
そういう意味で、「ブランドは頭の中の “シード権”」と言うことができるでしょう。すべての新商品は、「製品」⇒「商品」⇒「ブランド」のプロセスを踏む、と著者は言います。
また、「ブランドは誰のものか」というのも、なかなか難しい問題です。ブランドは企業(または個人事業者)のものでありながら実は、消費者が頭の中で預かっているものなのです。
次に、本書で使用している定義を2つほど、紹介しておきます。一般的に、こうした整理をすると理解しやすくなるという、分かりやすい定義です。
まず、顧客・消費者・生活者という単語についてです。本書では、顧客<消費者<生活者、という順に広い概念として捉えています。顧客は自社の商品・サービスの購入・利用者、消費者は購入・利用する市場にいる人、生活者は購入・利用に関わりなく自社の活動範囲にいる人、ということです。
もうひとつの定義は、「ブランド価値」について、以下の式のように定義しています。
ブランド価値 = 商品提供価値 × コンテンツ提供価値 × リレーション提供価値
つまり、3つの提供価値の掛け算と定義されています。
では、本書の構成についてですが、以下の5部から成っています。
1.ブランディングに欠かせない要素
2.ブランディング実務への準備段階
3.ブランディングと顧客ステージ
4.価値創造のためのアプローチ方法
5.ブランディング・プロジェクト推進の実務ポイント
本書の内容は膨大な論点を網羅しているため、ここでは私がとくに感銘を受け、実際の個人ブランディングにも活用している、印象に残ったポイントを紹介します。
まず、「ブランディング活動」における三大要素について、以下の3つとなります。
1.ブランド・パートナーを1人の人物像とするペルソナ作成
2.ブランド・ストーリーの抽出
3.市場の中での方角を明文化するブランド・パーソナリティの確認
ペルソナとは、優良顧客の中から、いくつかの要素を組み合わせながら、納得のいく1人の人物として明文化することです。1人であれば誰にとっても想像しやすく、メッセージが届きやすくなります。
ブランド・ストーリーは長期間使えて他の商品と比べてブレないものです。また、具体的な表現を多くすることがポイントです。
ブランド・パーソナリティとは、他の商品とは違う「個性」で、「らしさ」を表現したものです。所属するカテゴリーから抜け出た存在になることが目的なので、ブランド・シンボルとなるものです。
本書の中で私が最も感銘を受けたのが、上記4部めの中にある「コンテンツ提供価値を創るための4つの方向」です。以下の4つが紹介されています。
1.逸話; 「苦難の経緯」 ⇒ 「偶然の出来事」 ⇒ 「マニアックなビジョン」 というエピソード
2.情景; ブランドを説明するための動画や写真
3.提案; 今までの生活習慣野中の新たな提案(=所属するカテゴリーの変更)
4.証明; 〇〇で一番という事実、〇〇が認定したという事実、顧客人数、お客様の声
これらは、私が重視する「コンテンツマーケティング」を行う上では、とても大切な考え方で、参考になりました。なお、コンテンツマーケティングについては、以下の2015年1月4日付コラムをぜひご覧ください。
採り上げている参考書籍は以下の通りです。
宗像淳 『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』 (日経BP社)
皆さんも定年前企業にあたって、改めて「ブランディング」について整理して考えてみませんか。
では、今日もハッピーな1日を!