情報通信革命によって、インターネットによる世界中の人々がつうながることは日常となり、とくに高速通信網の発達と、ソーシャルメディアの進化によって、世の中は大きくかわりつつある。
今日は、米国における若者とインターネットに関する研究の第一人者であるダナ・ボイドさん(マイクロソフト・リサーチ・シニア研究員、ニューヨーク大学助教)の著書を紹介します。
ダナ・ボイド 『つながりっぱなしの日常を生きる』 (草思社)
この本は、「ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの」という副題がついています。著者のダナ・ボイドさんは、若者、親、教育関係者166名に対して、ネットでつながる若者のソーシャルメディア活用に実態をこの本で明らかにしています。
大人から見ると、若者のソーシャルメディア利用やネット中毒など、ネガティブな印象が強いですが、テクノロジーの発達と若者は意外とうまく付き合っていると観察されています。
ひとつひとつの実例を紹介しながら、この本では若者のネット生活の傾向を論じています。整理された項目は主に以下の通りです。
1.アイデンティティ
2.プライバシー
3.中毒
4.危険
5.いじめ
6.不平等
7.リテラシー
8.パブリック
この本では、アメリカの若者のみが研究対象として採り上げられていますが、インターネットがパソコンの低価格化とともに一般家庭に普及したのが1995年頃からで、現在、成人を迎える若者は生まれた時からインターネットに囲まれている。
21世紀に入って、ブログサービスが開始され、匿名掲示板が2003年から、フェイスブックが2004年から始まった。フェウスブックの創業を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』がアメリカで公開されたのが2010年秋です。
この頃から「SNSの時代」が本格化したと言っていいでしょう。その間、若者のネット利用はモバイル、すなわち携帯電話へ移行し、さらにスマートフォンが全盛となります。
動画共有サイト「YouTube」は2005年、Twitter は2006年にスタートしました。ライブ動画配信のユーストリームが2007年、画像共有サービスのインスタグラムは2010年にサービス開始です。
若者はこれらの技術革新に次々と対応して、日常の生活に採り入れて上手く付き合ってきた、というのが著者の立場です。大人たちは、SNSの進化や次々に誕生するサービスの本質が分からず、批判が先に来てしまいます。
そうした傾向に警鐘を鳴らし、若者の生活や文化を正しく認識し、安全と幸福の追求という、変わらない価値観を大切にすべきだ、というのが著者の訴えです。
情報通信革命は、農耕革命・産業革命に次ぐ「第三の革命」と言われるくらい、大きな社会変革です。その真っ只中に私たちはいる、という認識をしっかり持って生きていくことが大切でしょう。
客観的で冷静な目を持つ本書は、一読に値する研究の成果だと思います。
では、今日もハッピーな1日を!