書評ブログ

仕事の効率を上げる超整理術

仕事の効率を劇的に上げる整理術を知っていますか?そこで今日は、昨日の 「そうじ力」 にも通じる、こちらの本を紹介します。

 

佐藤可士和 『佐藤可士和の超整理術』 (日経ビジネス人文庫)

 

佐藤可士和さんは、1965年生まれで多摩美術大学グラフィックデザイン科卒で、大手広告代理店の博報堂を経て独立し、「SAMURAI」 を設立しました。

 

国立新美術館のシンボルマークのデザインで知られ、ユニクロや楽天グループのクリエイティブディレクション、幼稚園や病院のプロデュースまで、活躍のジャンルは幅広く、注目を集めています。

 

この本は、佐藤可士和さんが初めて書いた著書の文庫版で、対象となる企業や組織の本質をつかみ、その存在を際立たせるコミュニケーション戦略デザイン力を発想する原点を描き出した書です。

 

本の冒頭には、「SAMURAI」 のシンプルなオフィスや収納倉庫が写真で紹介され、さらにシンボルマークやデザインなど、佐藤さんの作品が見られます。

 

本のタイトルに使われた 「超整理術」 という言葉のとおり、この本は 「整理」 をコンセプトにして組み立てられています。佐藤さんは、整理を以下の3つのレベルでとらえています。

 

1.「空間」 の整理術(レベル1) ~ プライオリティをつける
2.「情報」 の整理術(レベル2) ~ 独自の視点を導入する
3.「思考」 の整理術(レベル3) ~ 思考を情報化する

 

これら3つのレベルの整理術が、詳しく本の第3章~第5章で、それぞれ章立てをして解説されていますが、その前に、「問題解決のための整理術」 という目的と、続いて 「整理術」 の基本やプロセス、つまり原理原則が紹介されています。

 

とくに第2章にある 「整理術」 のプロセスはとても参考になります。問題の本質をきちんと捉えて対処するため、佐藤さんが行う 「整理」 のプロセスは次の3ステップです。

 

1.状況把握 : 対象(クライアント)を問診して、現状に関する情報を得る
2.視点導入 : 情報に、ある視点を持ち込んで並べ替え、問題の本質を突き止める
3.課題設定 : 問題解決のために、クリアすべき課題を設定する

 

プロセス自体は実に単純で、当たり前のことをしているわけですが、ひとつひとつに大きな意味があって、面倒だからと言ってステップを飛ばして行動に移ると、本質からほど遠い、的外れな結果になってしまう、といいます。

 

佐藤さんは、クリエイティブ・ディレクションの仕事は、ドクターが患者を診断して処方箋を書くプロセスと基本的には同じで、まずは対象のクライアントを問診して、現状を把握することが出発点です。

 

一番のポイントはそのあとで、「独自の視点」 を持ち込んで問題の本質に迫る部分です。問診によって把握した情報は、さまざまな情報が羅列してあるだけの混沌とした状態なので、それを 「整理」 していきます。

 

例えば、情報を並べ替えたり、プライオリティをつけていらないものを捨てたりすることで、あいまいな部分をなくしていきます。これがこうだからこうなる、というふうに関係性を見出し、整合性が取れるように整理していきます。

 

つまり、問題の本質を突き止めるために、情報の因果関係をはっきりさせていきます。そのために不可欠なのが、自分なりの視点を導入することです。

 

そうしたうえで、課題を登るべき山と考え、登るコースを見極めていくのが最終設定になります。これらの 「整理」 のプロセスを、この本では佐藤さんが手がけた、キリンの発泡酒 「極生」 のプロジェクトを実例に説明しています。

 

この本の中で、私が最も勉強になり、感銘を受けたのは、整理するために第2ステップの 「独自の視点を導入する」 ということでした。第4章に、それは詳しく述べられています。

 

例えば、視点を持ち込むという感覚は、インターネットの検索エンジンにキーワードを打ち込む作業をイメージすると分かりやすい、と説明されています。キーワードがひとつの視点なのです。

 

また、本質を探るには、引いて見つめることが大切、ということが紹介されていて、自分の経験からも 「まさにその通りだ」 と感じました。「そういうことだったのか」 という感動です。

 

視点がディテールの方へ狭まってしまうと、自分たちのことが客観的に見えなくなってしまいます。つまり、本質的な問題のあり方に気づくためには 「引いて見つめなおす」 という客観的な視点を持つことが重要だ、という意味です。

 

脳科学者の茂木健一郎さんは、そのことを著書 『「脳」整理法』 (ちくま新書)の中で、「ディタッチメント」 という言葉で紹介しています。

 

これはあたかも、「神の視点」 に立つがごとく、ものすごく俯瞰して物事を見つめるということです。神のように達観した視点を持つことが、科学者の基本姿勢として非常に大切だ、と述べられていて、これと同じことが 「情報の整理」 の場合にも言える、ということです。

 

思い込みを捨てることから視野が広がりますし、視点が決まればビジョンが見えてきます。佐藤さんのクリエイティブ・ディレクションという仕事は、コミュニケーション戦略にしてもデザイン提案にしても、すべてこの 「整理術」 が基本になっています。

 

その 「整理術」 のコアが、「独自の視点導入」 であって、視点導入のコツの中で、とても大切な手法が 「ディタッチメント」、すなわち、俯瞰して客観的にみる視点ということです。

 

そのほかにも、佐藤さんの 「超整理術」 はさまざまな事例を採り上げながら本の中で紹介されていきます。ここから先は本をお読みいただいた時の楽しみとさせていただきます。

 

問題解決のために、本質を整理する仕事に取り組まれている方々に、この本は大きな示唆を与えてくれると思います。

では、今日もハッピーな1日を!