「成人期だけでなく、胎生期や子どものときの環境が、その後の高齢期の健康に影響する」と説明している本があります。
本日紹介するのは、私が尊敬する元京都大学総長の井村裕夫さんが書いた、こちらの新刊新書です。
井村裕夫『健康長寿のための医学』(岩波新書)
この本は、以下のような最先端医学の考え方を紹介している点で、ぜひ若い人々にも読んだもらいたい名著です。
◆ ライフコース・ヘルスケア (人生の早い時期から自分の体について考える)
◆ 先制医療 (発症する前に予防する)
◆ サクセスフル・エージング (自立して生活する健康、社会へのコミットメント維持)
◆ 健康寿命 (第三者の助けを要せずに健康に生活)
◆ NCD (Non-Communicable Desease = 非感染性疾患)
本書は以下の10部構成から成っています。
1.少子高齢化とその社会への影響
2.高齢社会で問題となる疾患、NCD
3.環境の変化はNCDにどのように影響するか
4.NCDにどこまで遺伝が関与するか
5.早期の環境因子の影響と新しい学説、DOHaD説
6.人生の生活史の特徴と、それに基づくヘルスケア
7.高齢期の健康-サクセスフル・エージングのために
8.ライフコース・ヘルスケア-新しい健康管理
9.先制医療-医学の新しい挑戦
10.健康長寿社会を実現するために-一人ひとりが主役の未来
本書は中盤で専門的な記述が続いて、難しい部分もありますが、全体として、今後の世界的な少子高齢社会に向けての課題や解決のためのコンセプトが明確に提示されていて有益です。
とくに重要なコンセプトは、従来、高齢期の健康は例えば40歳以上の成年期になってから注意すべきと一般に考えられていましたが、潜在的な病的状態は、実は胎生期からさらに少年期、青年期を通して徐々に進行する、ということです。
したがって、早い時期から、人生の全体を通して健康に注意する、いわゆる「ライフコース・アプローチ」が必要になってきます。
本書では、人生の生活史(=ライフヒストリー)と後年の健康への影響を、世界の豊富な臨床データや研究結果を踏まえて、方向性を打ち出している点が画期的です。
また、巻末には海外の書籍を中心に「参考文献」の一覧が掲載されていて役立ちます。とくに本書の最後の部分で紹介されているアメリカの国立衛生研究所(NIH)の長官であるF・S・コリンズの著書『遺伝子医療革命』(日本放送出版協会)は注目すべき文献です。
そして締め括りとして、「健康長寿社会のためのパブリック・ヘルス」を本書は提唱し、一人ひとりが主役の時代が来たとしています。
ライフコース・ヘルスケアを実現するためには、医療提供者は従来のような受け身の姿勢ではなく、より積極的にコミュニティの中に入っていって、健康長寿の推進と先制医療の実践が求められるでしょう。
あなたも本書を読んで、健康のあり方に関する最先端の知見を手に入れませんか。
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では、今日もハッピーな1日を