書評ブログ

大橋巨泉『それでも僕は前を向く』(集英社新書)

大橋巨泉氏は、私が人生の師として、生き方や人生観を最も参考にしている人のひとりだ。本書は、大橋巨泉氏の生きる哲学や人生観がどのように形成されたかというルーツを明らかにした書で、師と仰ぐ私にとってとても感銘を受けた。

 

大橋氏の人生は、以下の人々や体験から多くの影響を受けて作られている、ということだ。

 

1.父親の大橋武治の現実主義・実存主義
2.母親の子どもを守る覚悟と早過ぎる母親の死
3.米空軍の空爆を受けて死にそこなった戦争体験
4.1945年8月15日の終戦日に180度転換した価値観
5.山口瞳先生「ものごとは一方だけから見てはいけない。何事も両面から見る。」という教え
6.日大一高・前田治男先生の「学問はできるうちにしておけ。親の脛はかじれる時にかじっておけ。」という教え
7.早稲田大学政経学部新聞学科の木村毅先生「強権政治を阻止するのは勇気あるジャーナリズムである。」という教え

 

以上のような教えから様々な影響を受け、大橋巨泉の「人生のスタンダード」が出来上がった。主なものは以下の通り。

 

1.切り替えて前を向く、それでも前を向く
2.人の持っている「運の総量」は決まっている
3.自分のやりたいことは、自分が稼いだ金でやれ
4.平和と自由を守る、権力におもねらない
5.みんなちがって、みんないい (by 金子みすずの詩 『私と小鳥と鈴と』 )
6.何事かを判断する時に「今回の人生では」という前提条件をつけること
7.「考える事」こそ力である
8.全部を取ろうとしてはいけない( You can’t have everything. )

 

大橋巨泉氏は昨年2013年11月に二度目のがん手術を受けて今リハビリに取り組んでいる。それでも前を向く、というのは自らを鼓舞するつもりで書いたのだろう。

 

人生の指針になる本書を、ぜひ多くの志ある若者・中高年の皆さんに推薦したい。