ドキュメンタリー『定年前起業への道-57歳からの挑戦!』の第59回は、「知的生活の実践」<その4>で、中川淳一郎さんほかが書いた本を紹介します。
中川淳一郎ほか『読書で賢く生きる』(ベスト新書)
この本は、これまで私が紹介してきた本とは、やや趣を異にします。自己啓発を初めとするビジネス書の乱造にやや批判的な意見も持っている方々です。
中川淳一郎、漆原直行、山本一郎という3人が、それぞれ「読書の意義」や「本との付きあい方」といった視点から所論を語り尽くしたのが本書です。
またこの3人が、2012年2月から続けてきたトークイベント「ビジネス書ぶった斬りナイト」(於・阿佐ヶ谷ロフトA)のプレイバックも本書に収録されています。
まえがきを書いている漆原直行さんによれば、読書とは、「自分を相対化する営み」ということです。
読書は、「自分にはまだまだ知らないことがたくさんある」という、「無知の知」に気づく行為にほかなりません。
本書は、「賢い読者になるための読書」という視点を強く意識しながら、全体が構成されています。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.ネット時代こそ本を読むとトクをする (中川淳一郎)
2.捨てるべきビジネス書、読むべきビジネス書 (3名)
3.駄本を見極め、古典を読破する技術 (漆原直行)
4.ビジネス書業界の呆れた舞台裏 (3名)
5.人生を変えていく読書術とは (山本一郎)
6.読書を武器に賢く生きること (3名)
まず最初に出てくる中川淳一郎さんは、「ライトな読書術」を勧めています。読む本の分類としては、以下の2点を心がけているそうです。
1.共通言語にならざるを得ないもの
2.徹底的に同じ著者ばかり何度も読む
また中川さんは、「ネット時代だからこそ、他者との差別化のために本を読むべし」としています。
今やネットやテレビからの情報は、多くの人が見聞きしているものです。それに対して、知識の差別化をするにあたっては、逆説的ですが、あまり多くの人が接しない情報に接することが重要だ、ということです。
こうした読書に対する姿勢の中で、「同じ著者の本ばかり何度も読む」というのは、まさに私の「読書法」です。
「著者まるごと理解」と私は読んでいますが、著者が言いたい「大切なメッセージ」は繰り返し出てきますし、その著者の「思考法」、「発想法」にまで触れることができるのでは、と思います。
このほか、漆原さんは、新刊よりも初期作品を読んだ方がいいことや、駄本を見極め、古典を読破する技術を提唱しています。
また、山本さんは、「本とは知の体系である」と言っていて、子どもの頃に読んだ本と、現在との連携性があれば面白い、ということです。
さらに、本を読む姿勢、呼吸と集中力の関係が紹介されています。
最後にビジネス書には厳しい3名の方々に、推薦するビジネス書をそれぞれが挙げているので、紹介いたします。
まず、中川さんは2冊。これが別格だと言います。
松下幸之助『商売心得帖』(PHP文庫)
松下幸之助『経営心得帖』(PHP文庫)
次に漆原さんは、自己啓発書は3冊のみでいいとして、この3冊を挙げています。
スティーブン・R・コヴィー『七つの習慣』(キングベア出版)
ナポレオン・ヒル『思考は現実化する』
デール・カーネギー『人を動かす』
最後に、山本さんは、「私という人間を形作った本たち」として、以下に3冊を挙げています。
岡崎久彦『戦略的思考とは何か』(中公新書)
加藤久和『世代間格差 人口減少社会を問いなおす』
カレン・フェラン『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
3人それぞれの、賢く生きるための「読書観」が、参考になります。あなたも「定年後の知的生活」のヒントとして、本書を活かしてみませんか。
2015年11月1日の「定年前起業」まで、あと108日です。皆さんの温かい励ましや応援をどうかよろしくお願いいたします。