「なぜ私たちは、働いていると幸せになれないのか?」― 毎日、真面目に仕事をしている。それなのに、なぜか気分が晴れない、やる気が出ない、職場へ行くのが憂鬱になる。実は、その「無気力」には理由があり、幸せは才能や性格ではなく、科学的に説明できる「メカニズム」だと説く本があります。

本日紹介するのは、山口県生まれ、東京工業大学卒業、同大学院修士課程修了後、キヤノン株式会社勤務、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授などを経て、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を務め、2024年より武蔵野大学ウェルビーイング学部長を兼任する、幸福学研究の第一人者、前野隆司(まえの・たかし)さんが著した、こちらの書籍です。

前野隆司『職場の憂鬱「無気力な毎日」には理由がある』(SB新書)

 

日本人の「働く幸福度」は、世界的に見ても非常に低い状況にあるといいます。仕事にやりがいを感じられない。職場で本音が言えない。人間関係に疲れる。周囲と自分を比べて落ち込む。「静かな退職」のように、最低限の仕事だけをこなして、心理的には職場から距離を置く。

こうした現象を、単に「本人のやる気がない」「最近の若者は仕事への意欲が低い」と片づけても、問題は解決しません。

著者が大規模調査のデータから明らかにする重要な視点が、「幸せ」と「不幸せ」は単純な反対語ではないということです。「幸せな人」と「不幸せではない人」は違う。

したがって、働く人のウェルビーイングを考えるには、幸せを増やすことと、不幸せを減らすことの両方が必要なのです。

本書は以下の5部構成から成っています。

1.なぜ今「働く幸せ」を感じられないのか?

2.日本の「働く幸せ」は危機的状況~一億総不幸社会~

3.働く幸せと不幸せを決める「7つの因子」

4.なぜ組織は「働く幸せ」を奪うのか

5.働きながら自分の幸せを守るため

 

本書の前半では、日本人が「働く幸せ」を感じにくくなっている背景について、以下のポイントを説明しています。

◆「幸せ」と「不幸せ」は一つの軸の両端ではなく、別々に考える必要がある

◆ 幸福は生まれつきの才能ではなく、一定のメカニズムによって高めることができる

◆ 日本人には、周囲を気にして自分を抑えるなど、幸福を阻害しやすい傾向がある

◆ SNSによる他人との比較や、短期的な快楽への偏重が幸福感を損なう場合がある

◆「孤独」と「孤立」は区別して考え、人とのつながりを失わないことが重要である

 

この本の中盤では、「働く幸せ」と「働く不幸せ」を生み出す因子や組織の問題について分析・解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 働く人の状態は「幸せ」と「不幸せ」の2軸で捉えることが大切

◆「働く幸せ7因子」は、①自己成長、②リフレッシュ、③チームワーク、④役割認識、⑤他者承認、⑥他者貢献、⑦自己裁量

◆「働く不幸せ7因子」は、①自己抑圧、②理不尽、③不快空間、④オーバーワーク、⑤協働不全、⑥疎外感、⑦評価不満

◆ ビジョンがなく、本音を言えば損をする「言ったもん負け」の職場は、人の幸福度や意欲を低下させる

◆ ウェルビーイングは「ぬるい職場」をつくることではなく、幸せに力を発揮できる組織をつくること

つまり、「働く幸せ」を高めるだけでは十分ではなく、「働く不幸せ」を生み出している要因も同時に減らしていく必要があります。

たとえば、「自己成長」や「他者貢献」を感じていても、「オーバーワーク」や職場での「理不尽」が続けば、幸せに働き続けることは難しくなります。

逆に、不満やストレスが少ないだけでも十分ではありません。「自己裁量」「他者承認」「役割認識」など、仕事を通じて前向きな幸福感を生み出す要素も必要なのです。

 

本書の後半では、働きながら自分の幸せを守る方法について、説明・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ まず肩の力を抜き、セルフケアを大切にする

◆ 「ウェルビーイング・ファースト」で働き方を考える

◆ AIを活用して、人間が本来取り組むべき仕事に集中する

◆ アサーティブな自己表現で、健全な人間関係をつくる

◆ 他人と比較しすぎず、人と協力して生きる

 

本書で私が最も共感したのは、幸せは「才能」ではなく「メカニズム」であるという考え方です。職場や上司、会社の制度を自分一人ですべて変えることはできません。

さらに本書の巻末には、付録として「働く人の幸せ/不幸せ診断」が掲載されています。

自分の働き方や職場環境を振り返り、「働く幸せ7因子」のうち何が満たされ、何が不足しているのか、また「働く不幸せ7因子」のうち何が自分の幸福感を下げているのかを確認できる実践的な診断です。自分の「働く幸せ7因子」と「働く不幸せ7因子」をチェックすることで、何を増やし、何を減らせばいいのかが見えてきます。

人生100年時代には、会社員としてのキャリアだけでなく、定年後も含めて「何のために働くのか」「どんな人と働くのか」「自分は何をしている時に幸せなのか」を問い直すことが大切になります。

働くことと幸せになることを、対立するものにしない。自分の幸福を科学的な視点から捉え直し、今日からできる小さな行動を始める。

仕事への意欲が湧かない人だけでなく、経営者、管理職、定年後の働き方を考える人にも、多くのヒントを与えてくれる一冊です。

YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、人生100年時代の働き方、定年後キャリア、ひとり起業、幸福な人生設計について発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。

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では、今日もハッピーな1日を!【4231日目】