『老いと死をファクトで考えてみた』
「正体のわからない不安に『輪郭』を与えれば、もう恐れる必要はない。」― 老い、病気、孤独、運、そして死。誰も避けることのできない人生の問題を、感情や思い込みだけで捉えるのではなく、「データと事実」をもとに考えていく。そうすることで不安の正体を見極め、自分にできることへ力を注ぐという、出口治明さんならではの死生観をまとめた一冊があります。
本日紹介するのは、1948年三重県生まれ、京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任、2008年にライフネット生命保険を開業して代表取締役社長に就任、その後、立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務め、現在は学校法人立命館顧問、APU名誉教授として活躍する出口治明(でぐち・はるあき)さんが著した、こちらの書籍です。
出口治明『老いと死をファクトで考えてみた』(扶桑社新書)
人は年齢を重ねれば、体力が衰え、できないことも増えていきます。そして、いつか必ず死を迎えます。分かっているはずなのに、「老いたらどうなるのか」「病気になったらどうしよう」「孤独にならないか」「死ぬのが怖い」と、不安は尽きません。
著者が提案するのは、こうした漠然とした不安を、まずファクトによって具体化することです。老いについて大切なのは「あきらめる」こと。ただし、それは投げ出すことではありません。
自分では変えられないことを受け入れ、変えられることにエネルギーを使うという考え方です。人生には「暖流」と「寒流」があり、どちらに流されるかを自分ですべて決めることはできません。しかし、どんな流れの中で、どう泳ぐのかは選べます。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.衰える体と、どう付き合うか
2.それでも人は、死ぬまで成長できる
3.人生には、暖流と寒流がある――運とどう付き合うか
4.孤独でいい、孤立はするな
5.宇宙の歴史から、自分の死を眺めてみる
6.すべての人が支え合う社会をめざして
本書の前半では、老いを受け入れながら成長を続ける考え方について、以下のポイントを説明しています。
◆ 老化による身体の変化を認め、できないことは「あきらめる」ことも大切になる
◆ 「精一杯生きる」とは、無理をして歯を食いしばり続けることではない
◆ 終活は過度に準備するのではなく、必要最低限を整えればよい
◆ 人間の器そのものを大きくしようとせず、中に入れる知識や経験を入れ替えていく
◆ 年齢に関係なく、新しいことを学び続けることで人は成長できる
この本の中盤では、運や人間関係とどう付き合うかについて解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 人生には自分ではコントロールできない「運」の要素が大きく影響する
◆ 運そのものを上げようとするより、起きた出来事に適応する力を持つ
◆ 暖流か寒流かは選べなくても、その中でどう泳ぐかは自分で選べる
◆ 一人で過ごす「孤独」と、人とのつながりを失う「孤立」は分けて考える
◆ お金は目的ではなく、人生で選べる可能性を増やす「選択肢」として捉える
本書の後半では、死と社会について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 人類や宇宙の長い歴史から見れば、一人の人生や死を客観的に捉えられる
◆ 死を必要以上に恐れず、今をどう生きるかに意識を向ける
◆ 働くことは社会を支え、次の世代へ価値を残す行為でもある
◆ 高齢者も含め、できる人ができる形で社会を支えることが大切になる
◆ 世代を超えて支え合える社会をつくることが、超高齢社会の課題になる
本書を読んで最も印象に残ったのは、「変えられないこと」と「変えられること」を切り分けるという点です。
老化も、運も、そして最後に死を迎えることも、自分の意思だけでは変えられません。
しかし、何を学ぶか、誰とつながるか、どう働くか、お金をどう使うか、今日をどう生きるかは選択できます。
とくに「孤独でいい、孤立はするな」という言葉は、人生後半を考えるうえで重要でしょう。一人の時間を楽しむことと、社会とのつながりを失うことはまったく違います。そして、「お金とは選択肢の別名」という考え方も印象的です。
長寿社会における資産形成も、単にお金を増やすことではなく、人生の選択肢をできるだけ長く持ち続けるためと考えれば、その目的が明確になります。
老いや死という避けられないテーマを悲観するのではなく、ファクトを知り、自分で選べることに集中する。老いを恐れるより、老いを知る。死を恐れるより、今日を生きる。
人生100年時代を、自分らしく最後まで生きるためのヒントを与えてくれる一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【4238日目】








