「老後は人生の総決算。お金は足りるのか、人に迷惑をかけずに暮らせるのか。」― 健康、生活習慣、転倒事故、詐欺、住まいの片付け、介護、遺言、そして死。高齢になれば誰もが直面する問題について、89歳の医学者が自らの経験と科学的知識、ユーモアを交えながら、人生の最期まで自分らしく生きるための知恵をまとめた本があります。

本日紹介するのは、1936年東京都生まれ、東北大学医学部卒業後、東北大学加齢医学研究所、東京大学医科学研究所、ウィスコンシン大学、WHO国際がん研究機関、昭和大学などで40年間にわたりがんの基礎研究に従事し、日本癌学会会長、岐阜大学学長、日本学術振興会学術システム研究センター副所長などを歴任、2011年に瑞宝重光章を受章し、2025年8月28日に89歳で逝去された医学者、黒木登志夫(くろき・としお)さんが著した、こちらの書籍です。

黒木登志夫『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)

 

人生100年時代と言われるようになりました。しかし、長生きできるようになったからといって、老後の不安がなくなったわけではありません。

いつまで健康でいられるのか。生活費や医療費、介護費用は足りるのか。一人暮らしになったらどうするのか。介護が必要になったとき、家族にどこまで頼ってよいのか。そして、どこで、どのように最期を迎えるのか。

こうした問題について、著者は医学者としての科学的知識と、89歳の高齢者としての実体験の両面から考察しています。

本書の特徴は、老いを悲観するのではなく、「できることは自分で備え、できなくなったことは周囲の助けを受け入れる」という現実的な姿勢です。

また、健康管理だけでなく、住まいの整理、介護施設への入所、遺言書の作成、死の受け止め方まで扱っている点で、まさに「老いの教科書」と呼べる内容になっています。

この本の冒頭で著者は、高齢者を以下の3つに区分して考えるべきだと提唱しています。

◆ 前期高齢者(65~74歳): Old   (2025年現在 1502万人 12.2%人口)

◆ 後期高齢者(75~84歳): Older Old(2025年現在 1430万人 11.6%人口)

◆ 長老高齢者(85歳~)  : Oldest Old(2025年現在  689万人  5.6%人口)

 

本書は以下の10部構成から成っています。

1.前期高齢者、後期高齢者、長老高齢者の生き方

2.元気で健康な老人になろう

3.生活習慣を見直そう

4.高齢者は危険がいっぱい

5.住まいの片付けは子どもと喧嘩しながら。最後は子どもにしたがう

6.親不孝介護を受け入れよう

7.どこで死にたいですか

8.遺言書は面倒だ。だが作らねば

9.死ぬのは自然

10.医療費を抑えるにはどうしたらよいか

 

本書の前半では、健康寿命を延ばし、高齢期の危険を避けるための考え方について、以下のポイントを説明しています。

◆ 高齢期を一括りにせず、年齢や身体機能に応じた生き方を考える

◆ 血圧管理や生活習慣の改善によって、心血管疾患のリスクを減らす

◆ 性格やストレスと健康の関係を理解し、無理のない暮らしを心がける

◆ 転倒・骨折を防ぐため、室内の床や生活動線を整理する

◆ インチキ医療や特殊詐欺から身を守る知識と備えを持つ

 

この本の中盤では、住まいの整理や介護、最期を迎える場所について解説しています。主なポイントは次の通り。

◆ 住まいの片付けは、体力と判断力があるうちから進める

◆ 子どもとの意見の違いを受け入れ、安全で暮らしやすい環境を優先する

◆ 家族だけで介護を抱え込まず、施設入所も選択肢に入れる

◆ 見守り装置などを活用し、一人暮らしのリスクを減らす

◆ 自宅か施設か病院か、どこで最期を迎えたいかを考えておく

 

本書の後半では、死への備えと医療費について考察・提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 遺言書を作成し、財産や相続の意思を明確にする

◆ 死を避けられない自然な出来事として受け止める

◆ 最期まで自分らしく生きるための準備を進める

◆ 医療の必要性と効果を考え、過剰な医療を避ける視点を持つ

◆ 自分と家族の負担を考えながら、納得できる老後を設計する

 

本書を読んで最も印象に残ったのは、医学者としての専門知識と、89歳の高齢者としての実感が一体になっているという点です。

健康を守るための知識は大切ですが、どれだけ気をつけても老化そのものを止めることはできません。だからこそ、健康管理と同時に、住まい、介護、お金、最期の迎え方まで準備しておく必要があります。

とくに「親不孝介護を受け入れよう」という考え方は重要です。家族にすべてを任せるのではなく、介護する家族の生活も尊重し、必要なら施設や外部サービスを利用する。

また、著者が提案する「ピンピンごろり」という考え方も興味深いものです。元気に暮らしながらも、最期には別れや身辺整理のための時間があることを大切にしています。

老後の幸せとは、何でも自分でできることではなく、できなくなる現実を受け入れながら、最後まで人生を楽しむこと。

健康、介護、住まい、終活を一体として考え、人生100年時代の後半戦を充実させたい人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、人生100年時代の働き方、定年後キャリア、ひとり起業、資産形成やライフスタイルなど、仕事と人生を豊かにする情報を発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。

https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ

では、今日もハッピーな1日を!【4239日目】