「AI時代に必要なのは、単なる学び直しではない。組織そのものを “スキルベース” へ変えることだ。」生成AIや自動化が急速に進む中で、企業や自治体に求められているのは、社員個人に学習を丸投げすることではなく、必要なスキルを可視化し、学習・評価・配置・報酬まで一体で変革することです。本書は、リスキリング人材戦略と組織変革の視点から捉え直し、AI時代に生き残る組織のつくり方を具体的に示した一冊です。

本日紹介するのは、早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)へ入行。2002年にニューヨークでグローバル人材育成のスタートアップを起業し、その後、米国フィンテック企業日本法人代表、通信ベンチャーのグローバル部門役員、アクセンチュアで人事領域のDXと採用戦略を担当。2021年には日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立し、政府・自治体への政策提言や企業向けのリスキリング導入支援を行う後藤宗明(ごとう・むねあき)さんが書いた、こちらの書籍です。

後藤宗明『AI 時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

本書は、「リスキリング=個人が新しい知識を学ぶこと」という理解から一歩進み、企業や自治体が主体となって、人材のスキルを基軸に組織そのものを再設計する必要があると説いています。

 

本書は以下の3部構成から成っています。

1.リスキリング3.0の時代~スキルベース組織への変革の始まり~

2.企業変革とリスキリングする組織を創る7つのアクション

3.リスキリングで日本の未来を創る人材戦略

 

本書の前半では、リスキリングの進化と「スキルベース組織」への変革について、次のポイントを中心に解説しています。

◆ リスキリングは、EdTech中心の「1.0」、スキルテックが台頭した「2.0」を経て、組織全体をスキル基準で設計する「3.0」の時代へ入っている

◆ これまでの職務経歴や肩書だけではなく、一人ひとりがどのようなスキルを持ち、どの程度活用できるのかを可視化することが重要になる

◆ テクノロジーの進化によって「スキル寿命」は短くなっており、今持っている能力がいつまで価値を持つのかを把握する視点が欠かせない

◆ スキルベース組織では、採用、育成、配置、評価、報酬までを「どんなスキルを持っているか」という基準でつなげていく

◆ リスキリングを一時的な研修施策で終わらせず、事業戦略と連動した継続的な人材変革として組織に組み込む必要がある

 

この本の中盤では、リスキリングする組織をつくるための具体的な7つのアクションが紹介されています。主なポイントは次の通り。

◆「制度」として、社員が学び、新しい仕事に挑戦できる組織設計を整える

◆「戦略」として、人事部門だけで完結させず、事業部門と連携しながら必要なスキルを特定する

◆「学習」では、AIやデジタル技術を活用し、一人ひとりに合った学習デザインへ再設計する

◆「評価」「資格」「配置」を連動させ、学んだスキルを可視化し、実際の仕事や異動で活用できる仕組みをつくる

◆「報酬」までスキルと結びつけることで、学ぶほど成長機会や処遇が広がる組織文化を形成する

 

本書の後半では、AIやロボットが普及する社会で、日本が成長を続けるための人材戦略について提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ AIによる自動化が進む中で、単純に雇用を減らすのではなく、リスキリングによって成長分野への労働移動を実現する

◆ 一人ひとりが自分の仕事を自動化できる「Automation skills」を身につけ、AIを使われる側ではなく使いこなす側になる

◆ 少子高齢化社会では、健康で質の高い人生を長く続けるための「ロンジェビティ・スキル」が、個人にも組織にも重要になる

◆ AI時代には、一つの専門分野だけでなく、複数の領域を横断して価値を生み出す「学際的スキル」が求められる

◆ 組織内にChief Reskilling Officer(CRO)やリスキリング・アドバイザーを置き、リスキリング推進を専門的に支援する体制づくりが必要になる

 

本書で最も重要なメッセージは、「リスキリングを個人の自己責任にしてはいけない」ということです。これまで日本では、資格取得や学び直しは「本人が自主的にやるもの」と考えられがちでした。

しかし、生成AIや自動化によって仕事そのものが急速に変化する時代には、個人の努力だけでは対応できません。どの仕事が減り、どの仕事が増えるのか。これからどんなスキルが必要になるのか。そのスキルをどう学び、どう実践し、どの仕事へ配置するのか。

そこまでを企業や自治体が戦略として設計してこそ、本当の意味でのリスキリングになるのだと思います。

また、本書で興味深いのは、「スキルベース組織」という考え方です。従来の日本企業では、「○○部の課長」「営業20年」といった所属や経験年数が人材評価の中心になりがちでした。

しかし、これからは肩書や年齢ではなく、「何ができるのか」「どんなスキルを持っているのか」を基準に人材を配置する方向へ変わっていくでしょう。

これは、中高年人材にとっても大きな意味があります。50代、60代になっても、新しいスキルを身につけ、経験と掛け合わせることで、新しい役割を担う可能性が広がるからです。

さらに、本書が提唱する「キャリア・ロンジェビティ」は、人生100年時代を考えるうえで非常に重要な視点です。長く働くためには、デジタルやAIのスキルだけでは足りません。

健康を維持する力、人間関係を築く力、学び続ける力、キャリアを柔軟に変える力などを含めて、「長く元気に働き、生きるための総合的なスキル」が必要になります。

私自身も、定年後キャリアや人生100年時代のライフスタイルについて発信していますが、これからは「定年まで一つの仕事を続ける」という発想ではなく、「学び直しながら何度もキャリアを更新する」ことが当たり前になると考えています。

AI時代には、今持っている専門性を守るだけでは十分ではありません。自分の強みを土台にしながら、新しいスキルを掛け合わせ、「自分にしかないスキルセット」をつくっていくことが重要です。

企業経営者や人事担当者はもちろん、自治体の人材政策に関わる方、AI時代のキャリアを考えるビジネスパーソン、そして50代・60代からの学び直しを考えている方に、ぜひ読んでほしい一冊です。

YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、読書術、人生後半戦の生き方、定年後キャリア、資産形成、健康、AI活用などについて発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。

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では、今日もハッピーな1日を!【4171日目】