『RETIRE SHIFT(リタイア・シフト): 人生100年時代の引退戦略』
「これからの引退年齢は、会社ではなく自分で決める。」― 人生100年時代、日本人はこれまでより長く元気に働けるようになり、慢性的な人手不足を背景に60代以降の働き方も大きく変わろうとしています。本書は、働く期間、年金の受け取り方、資産形成と取り崩し、FIRE、おひとりさまの老後まで、「自分はいつ、どう引退するのか」を主体的に設計するための戦略書です。
本日紹介するのは、1972年生まれ、中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研などを経て独立し、商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役などを歴任。現在はフィナンシャル・ウィズダム代表、リタイアメント・アドバイザー、AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザーとして、老後資産形成、企業年金制度、確定拠出年金、投資教育を専門に活動する山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)さんが書いた、こちらの書籍です。
山崎俊輔『RETIRE SHIFT(リタイア・シフト):人生100年時代の引退戦略』(東洋経済新報社)
本書は、長寿化、人手不足、高齢者の健康水準向上、年金制度、資産形成環境の変化を踏まえ、「何歳で会社を辞めるのか」を会社任せにせず、自分自身で設計する必要があると説いています。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.「リタイア・シフト」時代の到来――これからの引退年齢は自分が決める
2.若返り続ける日本人――データで分かる、高齢者人材の有能さ
3.「65歳へのリタイア・シフト」の失敗――なぜ「継続雇用は低賃金」が正当化されてしまったか
4.高齢社員を戦力にできる会社、できない会社――経営者のための「リタイア・シフト」
5.60歳からの「働き方」と「辞め時」――「リタイア・シフト」の時代にあなたはどう動くか
6.WPPで長生きへの不安を減らす――年金を増額させる「遅いリタイア」戦略
7.FIREで自由な人生を手に入れる――稼ぐ・節約・資産形成による「早いリタイア」戦略
8.「おひとりさま」の引退戦略――最期まで自由に生きるための準備
本書の前半では、「リタイア・シフト」という社会変化がなぜ起きているのかを、雇用と高齢者の能力という視点から解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 人生100年時代には、60歳や65歳を一律の引退年齢と考えるのではなく、自分の健康、資産、仕事観に応じて辞め時を決める必要がある
◆ 慢性的な人手不足によって、高齢者は「会社に残してもらう側」から「会社に必要とされる側」へと立場が変わりつつある
◆ 日本人の健康寿命は長く、70代の体力も過去と比べて若返っており、「高齢者だから働けない」という前提そのものが変化している
◆ 従来の継続雇用では、60歳を境に賃金を大幅に下げる仕組みが一般化してきたが、人手不足時代にはこうした制度が優秀な人材流出につながる可能性がある
◆ 企業側も、高齢社員を単なる雇用延長の対象ではなく、経験や能力を持つ戦力として活用できるかどうかが競争力を左右する
この本の中盤では、60歳以降の働き方と「遅いリタイア」を選ぶ場合の年金戦略について具体的に紹介されています。また第4章のあとにある「年金のことがよく分かるちょっと長めのコラム」は必読の内容で、ぜひ精読をお薦めします。主なポイントは次の通り。
◆ 50代、60代でも転職の可能性はあり、「今の会社に残るしかない」と決めつけず、自分がどのように働きたいのかを明確にすることが重要になる
◆ 60代以降は、フルタイム勤務、短時間勤務、副業、独立など複数の働き方を組み合わせ、自分に合った持続可能な働き方を設計する
◆ 「いつまで働くか」を曖昧にしたまま流されるのではなく、自分なりの引退時期をあらかじめ想定しておくことが、人生設計の自由度を高める
◆ 長く働きながら公的年金の受給開始を遅らせることで、将来受け取る年金額を増やす「WPP」という考え方を活用する
◆ 年金の繰下げは長生きリスクへの備えとして有効だが、何歳まで必ず繰り下げると固定せず、健康や資産状況に応じて柔軟に判断する
本書の後半では、早期リタイアを目指すFIRE戦略や、「おひとりさま」を含めた多様な引退プランについて解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 40代以降でも、収入を増やし、支出を抑え、資産形成を進めることで、通常より5~10年早く会社員生活を終える「リトルFIRE」を目指すことができる
◆ FIREは単に資産額だけで決まるものではなく、年間生活費や資産運用、年金受給開始までの期間を総合的に考えて設計する必要がある
◆ 早期リタイア後に孤独や社会とのつながりの喪失を感じ、「FIRE卒業」する人もいるため、お金だけでなく生きがいや人間関係の設計も欠かせない
◆ 50代からは仕事以外の人間関係を意識的につくり、会社を離れた後にも孤立しない生活基盤を準備しておくことが大切になる
◆ おひとりさまや配偶者との死別も想定し、住まい、老後資金、介護、人とのつながりまで含めて、自分一人でも暮らし続けられる引退戦略を考える
本書で最も印象に残るのは、「定年」という会社が決めた一つの年齢から、「自分でリタイアのタイミングを決める時代」へ移行しているという指摘です。
これまで日本では、60歳定年、その後65歳まで再雇用、という流れが一つの標準モデルになってきました。しかし人生100年時代には、60歳で完全に仕事を辞め、その後30年、40年を老後として暮らすモデルには無理があります。
一方で、「70歳まで働けるのだから、全員70歳まで働くべきだ」という話でもありません。重要なのは、自分が何歳まで、どのくらい働きたいのかを、自分自身で決めることです。
本書が提示する「リタイア・シフト」は、「長く働くこと」だけを意味していません。十分な資産をつくって早く辞めるFIREもあれば、働く期間を延ばして年金を増やす選択もあります。
フルタイムから週3日勤務へ移行する働き方もあれば、副業やひとり起業を組み合わせながら段階的に仕事量を減らす方法もあるでしょう。
つまり、「働くか、引退するか」という二者択一ではなく、働き方と引退の間にさまざまなグラデーションをつくることができるのです。
私自身も、人生100年時代の定年後キャリアについて発信を続けていますが、本書の考え方には強く共感します。とくに重要なのは、「辞め時を自分で決める」ためには、仕事だけでなく、お金、健康、人間関係、生きがいをセットで考える必要があるということです。
会社を辞めた後に何をしたいのかがなければ、FIREを実現しても幸福になれるとは限りません。だからこそ、50代、60代になってから突然「定年後をどうしよう」と考えるのではなく、40代、できれば30代から少しずつ準備しておくことが大切なのでしょう。
「住む場所」「付き合う人」「時間配分」、そして「お金」「健康」「働き方」を自分で選び直していくこと。それこそが、人生100年時代における本当の意味での「リタイア・シフト」なのだと思います。
これから定年を迎える50代・60代の会社員はもちろん、早期リタイアを考える40代、老後資金や年金戦略を見直したい方、そして人生後半を自分らしく設計したいすべての方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
YouTubeチャンネル「大杉潤のYouTubeビジネススクール」でも、読書術、人生後半戦の生き方、定年後キャリア、資産形成、健康、AI活用などについて発信しています。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。
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では、今日もハッピーな1日を!【4170日目】








