「小国でも、資源がなくても、戦略次第で“稼げる国”になれる」――そんなメッセージを掲げ、世界トップの一人当たりGDPを誇る小国から、日本が学ぶべき戦略を示した書があります。
本日ご紹介するのは、1975年愛知県生まれ、大蔵省(現財務省)、外務省でODAやEPAに関わり、東京大学博士・北京大学博士・ハーバード大学修士という国際政治経済と環境分野の高度な学識をもつ、京都大学大学院総合生存学館教授の関山健さんが著した、鹿島平和研究所との共編によるこちらの書籍です。
関山健・鹿島平和研究所『「稼ぐ小国」の戦略 世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること』(光文社新書)
この本は、人口1000万人以下・天然資源乏しいにもかかわらず、一人当たりGDP世界トップ10に入るルクセンブルク、アイルランド、スイス、シンガポール、アイスランド、デンマークの“成功モデル”を分析し、日本の成長戦略に活かす実践的ガイドです。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.ルクセンブルク
2.アイルランド
3.スイス
4.シンガポール
5.アイスランド
6.デンマーク
7.日本
8.日本が再び豊かになるためのヒント
この本の冒頭では、IMFの2023年データに基づき、「なぜ小国が世界トップクラスの富を築き、日本がG7最下位に甘んじているのか?」という問いを掲げ、各国の共通戦略に切り込む視点が提示されています。
本書の前半(1〜3部)では、小国の「稼ぐ仕組み」に焦点を当て、その戦略の共通点を次のように整理しています。
1.ルクセンブルク:欧州の金融ハブとして、法制度・税制・政策を一体で整備
◆ 業界特化型の規制緩和を意図的に設計
◆ 多言語・多文化人材の誘致体制
◆ 多国籍企業にメリットある軽課税構造
◆ デジタル金融インフラ整備に先行投資
◆ 安定・透明な政治体制で信頼確保
2.アイルランド:米国企業を呼び込む税戦略で“EUのシリコンバレー”へ
◆ 法人税率12.5%のブレずに維持された安定政策
◆ 若く英語人材豊富な市場供給
◆ 高度人材呼び込む大学・研究機関の整備
◆ EU市場へのゲートウェイ戦略
◆ 英仏語圏を橋渡しする地理的メリット
3.スイス:高付加価値産業と永世中立に基づくブランド構築
◆ ノウハウと品質を守る職人型教育
◆ 医薬・高級時計・精密機器の世界ブランド化
◆ 永世中立による「安全・資産保全」の信頼
◆ 人材流動性と自治のバランス
◆ 高税でも「稼ぐ国」の意識共有
この本の中盤(4〜6部)では、小国の社会システムと国民意識、サステナビリティ観点を加味した戦略が描かれています。
4.シンガポール:国家主導の都市国家モデルで富と秩序を両立
◆ インフラ投資と教育への巨額投資
◆ 外交的な信頼獲得でグローバル企業誘致
◆ 厳格な治安と規律文化で経営環境を最適化
◆ 政府ダイレクト型産業政策の実効性
◆ 移住者にも開かれた制度設計
5.アイスランド:自然資源と文化資本を高付加価値商品に転換
◆ 地熱・漁業を観光・ブランドに融合
◆ 少数精鋭で高い国際協力意識
◆ 中小企業を連携させた付加価値創出
◆ 教育と研究への地域投資
◆ 多様性を取り込む社会体制
6.デンマーク:福祉国家と高生産性を両立するデザイン国家
◆ 福祉を支える高い労働参加率
◆ 教育とデザイン産業の融合による創造力
◆ 中小企業における協働と共創
◆ 環境性能を付加価値化したグリーン戦略
◆ 国民の自己効力感を育む政策
本書の後半(7〜8部)では、日本が直面する課題を整理し、小国の戦略を“日本の文脈”で活かす提言に展開しています。
7.日本における主な現状分析と課題:
◆ 「規模の大きさ」が足かせとなっている産業構造
◆ 政策の継続性欠如が信頼を損ねる
◆ 教育制度が異文化適応力を育めていない
◆ 起業・スタートアップ支援が未成熟
◆ 財政と税制改革に対するコンセンサス形成の困難
8.日本が再び豊かになるためのヒント:
◆ 特定分野に集中投資しグローバル連携を図る
◆ 産学官の制度連携で実験都市やイノベーション拠点創出
◆ 税制・規制の抜本改革で稼ぐ構造を作る
◆ 教育環境改善で人的資源を再発見
◆ 国民意識として「戦略小国モデル」を受け入れる土壌形成
この本の締めくくりとして著者は、「大小ではなく、『戦略』次第で、国は何度でも“稼げる小国”に変われる」と力強く訴えています。
あなたも本書を手に取り、日本が再び世界で豊かに競争できる「戦略国家」への一歩を、今こそ考えてみませんか?
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では、今日もハッピーな1日を!【3771日目】