書評ブログ

日野瑛太郎『脱社畜の働き方』(技術評論社)

日野瑛太郎氏は東京大学工学部・同大学院を卒業し、就職するのが嫌で起業。敢えなく失敗して撤退し、嫌だった就職をする。

 

その後退職して、若くして経営者と従業員の両方を経験した立場から、「脱社蓄ブログ」を開設、月間50万PVを集める人気ブログとなった。会社に人生を支配されない働き方を提唱し、ブログで発信し続けている。

 

本書は、ブログに綴って訴え続けてきた著者の生き方、働き方を書いたものだ。社蓄にならないために、日野氏は、考え方が大切だと言う。「脱社蓄の考え方」というものがあって、それを本書で分かり易く説いている。

 

例えば、会社との距離感。会社の言うことや、会社での常識は疑ってかかるべきと言う。サービス残業を強要する論理や、「社会人」という不思議な言葉で、会社が常識とするルールに無理やり従わせようとすることを警戒せよ、ということだ。

 

人から強制されることが極端に嫌いなのだろうと感じるし、やや筆者の主張は極端に振れている感じがする。ただ、会社の理不尽な要求に日々、ストレスを感じている若者には大きな支持を受けているようだ。

 

そうでなければブログがこれほどアクセスを集めるはずがない。働くことにストレスを感じる若者は多いし、3年持たずに辞めていく若者は後を絶たない。離職率の高い会社は、「ブラック企業」とネット上で叩かれ、レッテルを貼られている。

 

長時間労働の強要と、実質的なサービス残業となっている低賃金の実態。確かに忍耐力のない若者のせいだけにできない現実がある。本書でいう「脱社蓄」の考え方という極端な発想を持つぐらいでちょうど良いのかも知れない。

 

本書でプライベート・プロジェクトと呼ぶ、会社以外の生きる場所、できれば将来の稼ぎにつながる世界を持つことは有効だろう。仕事観や人生観は人それぞれであり、強要すべき性質のものでもない。

 

ただ、ここまで極端に開き直って考える発想もあるのだと参考に採り入れることは意味がある。若者には読んで欲しい書籍のひとつだ。