「中高年を狙い撃ちする早期退職募集も、働かないおじさんのような中高年不活性化の言説も、戦後の日本に古くからある問題です。」と述べて、「早期退職に直面した際、どうすれば幸せな選択をすることができる」のか、具体的な処方箋を示している本があります。
本日紹介するのは、上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻博士前期課程修了、NHK文化放送研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、パーソル総合研究所入社、労働・組織・雇用に関する多様なテーマの調査・研究を行う同社・上席主任研究員の小林祐児さんが書いた、こちらの書籍です。
小林祐児『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎新書)
この本は、「これから、私たちはどのように働いていけばいいのか。」「なぜ『働かないおじさん』は繰り返されるのか。」この問いを解決するために、問題の糸を丁寧に解きほぐし、処方箋を検討し、具体的な仕掛けを組み込み、個人の行動のための指針を示している書です。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.中高年が職場で肩身が狭い真の理由
2.狭まる「ミドル・シニア」包囲網
3.日本の「校内マラソン型」人事が「働かないおじさん」問題の原因
4.自分の居場所を確保するために
5.放さない人の落とし穴
6.「変われる」ことはキャリアの価値
7.企業はどうすればよいか
8.成功する早期退職を迎えるために
9.私たちはどう転職すればよいか
この本の冒頭で著者は、「本書ではビジネスの現場や専門の学術領域といった区分けにこだわることなく、領域横断的にこの問題を語っていきたい」と述べています。
本書の前半では、「中高年が職場で肩身が狭い真の理由」および「狭まるミドル・シニア包囲網」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 男性中高年の労働問題は、「働かない」「帰らない」「話さない」「変われない」の「四ない」問題
◆「働かない」はモチベーション低下、「帰らない」は居場所のなさ
◆「話さない」は「腹を割る対話のなさ」、「変われない」は変化適応力の減退
◆「四ない」問題には、「心理還元主義」だけでなく、仕組みづくりや環境整備も必要
◆ 日本では70歳までの就業が標準に
◆「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」の理解を正確に
◆「年功序列」は年長者への偏見、エイジズムを発生させている
◆「キャリア自律」と「ダイバーシティの尊重」というトレンド
この本の中盤では、「日本の校内マラソン型人事が働かないおじさん問題の原因」「自分の居場所を確保するために」「放さない人の落とし穴」および「変われることはキャリアの価値」について解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ 中高年社員の問題(モチベーション、パフォーマンス、マネジメント)は中長期に
◆「働かないおじさん」は、「校内マラソン大会」型のキャリアが原因
◆ 日本以外の国はエリート主義、日本は平等主義
◆ 人事管理の構造面に目を向けるべき
◆「帰らない」問題は、居場所のなさ
◆ サードプレイスの欠如が問題
◆ 加齢とともに交流の「量」も「質」も低下
◆ 男性中高年は「自己開示」をしなくなる傾向
◆ 35歳転職限界説は有効
◆ 中高年のパフォーマンスは「変化適応力」に左右される
◆ 変化適応力は、組織・企業・事業環境・技術などの変化
◆ 人がキャリアを通じて蓄積すべき「心の資本」
本書の後半では、「企業はどうすればよいか」「成功する早期退職を迎えるために」および「私たちはどう転職すればよいか」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ ジョブ型雇用は賃金カーブフラット化が狙い
◆ 60歳以上の人事管理は、貢献を基準とした「個別処遇」へ
◆ 専門にしがみつく「コンピテンシー・トラップ」
◆ 仕事、人間関係、認知の境界を主体的に変化させていく「ジョブ・クラフティング」
◆「話さない」問題を乗り越える
◆ よい転職のための自己認識は不足
◆ 転職後には、積極的な学習棄却(アンラーニング)を
◆「サードプレイス」を作ることも重要
この本の締めくくりとして著者は、「データを具体的なアクションに向かわせるのは、最後はその問題に対峙する人の『想い』であり『理想』です。」と述べています。
あなたも本書を読んで、「これから歳をとっていく自分は、どんな仕事人生を送りたいのか」を考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2952日目】