「大きな病気もなく、経済的にも家族関係にも恵まれている人であっても、「死にたい」という思いに駆られる例が少なくないのです。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、千葉大学医学部卒業、千葉大学大学院で医学博士号取得、さいたま赤十字病院に勤務し、2003年より医療法人社団杉浦病院院長、2004年より同医院理事長、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、埼玉県立大学、上尾中央看護専門学校で講師を務めている杉浦敏之さんが書いた、こちらの書籍です。
杉浦敏之『死ねない老人』(幻冬舎新書)
この本は、著者が出会い、学ばせてもらっている高齢の患者たちの心の内を紹介しつつ、現状の問題の背景や、その解決策を提示する書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.増え続ける「死にたい老人」の実態
2.生きていく理由を見出せなく「死ねない老人」
3.望まない延命治療が生み出す「死ねない老人」
4.高齢者が生きがいを持ち続けるために必要なこと
5.「望み通りの死」を叶えるために社会で取り組むべきこと
この本の前半では、「増え続ける死にたい老人の実態」について、次のポイントを説明しています。
◆ 長寿を幸福と思えない高齢者
◆ 高齢期の健康状態が下がるほど「生きがい」を持ちにくくなる
◆ 高齢者の自殺は全体の3割に達する
◆ 望まない延命治療で「死ねない高齢者」
この本の中盤では、「生きていく理由を見出せなく死ねない老人」および「望まない延命治療が生み出す死ねない老人」について解説しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 高齢者が「お荷物」とみなされる日本社会
◆「病院死」の増加が死を遠いものにした
◆ 年金を頼りにして死なせないパラサイト家族
◆ 第二次世界大戦の影響で死をタブー視する日本社会
◆ 治療と延命に突き進んできた日本
◆「死」を学ぶ時間がない日本の医学部
◆ 医師にとって「死」が敗北なら、確実に「全敗」
◆「人は死にゆくもの」というのが世界のスタンダード
本書の後半では、「高齢者が生きがいを持ち続けるために必要なこと」および「望み通りの死を叶えるために社会で取り組むべきこと」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「生きがい」を考えるキーワードは、「人の役に立つ」と「好奇心を持って学ぶ」
◆ 病気や不調との付き合い方を知る
◆ 人間にとって一番面白いのは他社とのコミュニケーション
◆ 現役世代の内から高齢期をどう生きるかを準備
◆ 本人の意思を尊重するのが「尊厳死」
◆「命は誰のものか」を社会で考えていく
◆ 穏やかな「在宅療養」「在宅死」は誰にでもできる
◆ 訪問看護、訪問介護の活用を
◆ 家族も「死を受け入れる準備」を
この本の締めくくりとして著者は、「与えられた老後の長い時間をどう充実させて生きるのか。それを個人も社会も、もっと考えていくべきでしょう。」と述べています。
そして「死ねない老人」という言葉に込めたもう一つの意味は、日本の終末期医療の問題だということです。
あなたも本書を読んで、長くなった老後を、いかに「生きがい」を持って、楽しく幸せに生きていくかを改めて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2947日目】