「子が、親の介護のために仕事を辞めなくても良い時代へ、親と同居しなくとも、それぞれの生活が成り立つ時代へと、世の中はどんどん変化し続けているのです。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、旧東京三菱銀行およびみずほ銀行で10年ほど窓口やローンアドバイザーに携わったのち、2013年に株式会社アテンドを設立、同年6月に「あしすとデイサービス」を開所、銀行員時代の接客・営業スキルを生かし、また自身も35歳で父親の介護を経験した当事者として、「介護する人・される人双方が安心して暮らせる介護ノウハウの提供と環境作り」の提供に邁進している、株式会社アテンド代表取締役、江戸川区介護認定審査会委員の河北美紀さんが書いた、こちらの書籍です。
河北美紀『介護認定審査会委員が教える 困らない介護の教科書』(同友館)
この本は、国や市区町村の制度を知らないことで、本来受けられるはずのサービスや、受給できるお金をもらえないという事態を防ぎ、介護する人も介護される人も安心して生活できるようにという想いを込めて執筆されたものです。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.社会に頼るのは当たり前の「介護」
2.決して他人事ではない、突然始まる介護
3.ここだけは押さえておきたい! 介護保険制度・要介護認定のポイント
4.介護保険サービスの種類と活用方法
5.お金の悩みは制度の利用で解決
6.知っておきたい! 認知症と遠距離介護のこと
この本の冒頭で著者は、「介護するうえで1番の悩み、それは『お金の悩み』です。」と述べています。
本書の前半は、「社会に頼るのは当たり前の介護」および「決して他人事ではない、突然始まる介護」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 介護保険は「現物支給」
◆ 介護を一手に引き受けるのではなく、「マネジメント」する
◆ 市区町村の介護保険課または地域包括支援センターに相談
◆ ケアマネージメントの流れは、①アセスメント(課題分析)、②ケアプラン作成、③サービス担当者会議等、④介護サービスの利用開始、⑤再アセスメント
◆ 親のお金が何年持つか計算し、現実的なプランを立てる
◆ 突然始まる介護
◆ 介護期間の平均は54.5カ月、介護費用の平均は月額7.8万円
◆ 一時的な介護費用は、平均69万円
◆ 外語下人は、①認知症18%、②脳血管疾患16.6%、③フレイル13.3%
◆ 65歳以上なら「一般介護予防事業」で、体操教室、脳トレ、栄養教室の利用
◆ 介護と仕事の両立のために制度をフル活用
◆ 老老介護、認認介護、ヤングケアラーの問題
◆ 自宅の介護環境を整えておく
この本の中盤は、「ここだけは押さえておきたい! 介護保険制度・要介護認定のポイント」および「介護保険サービスの種類と活用方法」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 介護保険料の納付は終身の義務、介護サービス利用は申請主義
◆ 申請、要介護認定・調査、審査・判定、認定結果の通知、ケアプランの作成
◆ 介護度判定のポイントは、家族の具体的説明と主治医意見書
◆ 要介護認定の不服申し立て(審査請求)
◆ 介護保険被保険者証の更新、区分変更
◆ なるべく近所のケアマネージャーを選ぶ
◆ 介護生活は家族と専門職によるチームケアで支える
◆ 介護施設は、感染症対策を万全にした運営に
◆ 介護施設を選ぶポイントは、①必要な介護サービス、②月々の費用、③立地、④職員に相談できる雰囲気、⑤プライバシーへの配慮
◆ 在宅生活をサポートする訪問介護、訪問入浴介護
◆ 需要が増す訪問医療サービス
◆ 通い、訪問、泊りを組み合わせる小規模多機能型居宅介護
◆ 住宅改修と福祉用具
◆ 入居一時金のない特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院
◆ 認知症グループホームと有料老人ホーム紹介事業者の活用
◆ 増加している「介護保険外サービス」
本書の後半では、「お金の悩みは制度の利用で解決」および「知っておきたい! 認知症と遠距離介護のこと」について、著者の経験・ノウハウを紹介・説明しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 介護離職者は毎年10万人超え、8割は「後悔している」
◆ 介護休業制度で乗り切る!
◆ 高齢者も受給できる「特別障害者手当」(要介護4~5なら月額27,350円)
◆ 寝たきりなど要介護3~5なら「介護手当」(月額3~4千円)を支給する市区町村も
◆ 施設費用が安くなる「介護保険負担限度額認定」
◆ 高額医療・高額介護合算療養費制度
◆ 遺族厚生年金の手続き漏れに注意
◆ 自宅で最期を迎えるのは日本では1割(海外は5割以上)
◆ 2025年、高齢者の5人に1人で700万人が認知症に
◆ 認知症の知識を持ち、患者の心理状態を理解すること
◆ 地域の見守り機能を最大限に活用
◆ 終末期の医療処置について「書面化」を
また、著者の河北美紀さんの前著『身近な人の介護で「損したくない!」と思ったら読む本-介護のプロが教える介護保険120%活用マニュアル』(実務教育出版)を合わせて読むと、介護の実務についてより理解が深まります。
この本の締めくくりとして著者は、親が元気なうちに「お金のこと」について話し合い、エンディングノートに希望を書いてもらい、生前整理も大切だと述べています。
あなたも本書を読んで、介護保険制度について学び、制度を活用することによって、介護のために離職したり、同居したりする必要がないことを認識して実践しませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2927日目】