一生分の「家の超・基礎」を、住宅のプロ&お金のプロに全部聞いて、専門家としての知識だけでなく、住宅の売買・賃貸にまつわる「実践的な家の話」をレクチャーしてくれる本があります。
本日紹介するのは、住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんと、元国税専門官、フリーライターの小林義嵩さんが書いた、こちらの新刊書籍です。
日下部理絵・小林義嵩『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)
この本は、家を借りる人・買う人・売る人、予定はないけど知識がないのが不安という人に対して、できるだけ多くの人のプラスになることを意識して編集された、もっともわかりやすく、やさしい「家のトリセツ」と言える本です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.はじめに 一生分の「家の超・基本」を、住宅のプロ&お金のプロに全部聞きました!
2.敷金・礼金ってなんですか?
3.すみません、2DKってなんですか?
4.家ってどうやって買うんですか?
5.「住宅ローンを組む」ってどういうこと?
6.家ってどうやって売るんですか?
7.固定資産税ってなんですか?
この本の冒頭で編集者の梅田直希さんは、「今さら聞きづらいけれども、家にまつわるここがわからない」というトピックを次の3原則に則って、住宅のプロ・お金のプロに聞いた、と述べています。
◆ 知ったかぶりをしない
◆ わかったふりをしない
◆ 理解できるまで聞く
本書の前半では、「住宅の超・基礎」および「賃貸についての話」を解説しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 一般的な住宅プランは、➀結婚や子どもの誕生、②子どもの独立、③終の棲家の準備
◆ 全国5210万戸のうち、戸建て54.9%、マンション42.4%(平成25年調査)
◆「資産価値」は戸建てよりマンションが高い
◆ 一生賃貸の生涯コストと新築マンションの生涯コストは9000万円でほぼ同じ(35歳からの50年間で試算)
◆「老後2000万円」問題は、住居費13000円/月で試算したもの
◆ プロは今、築浅中古(8~10年もの)を勧める
◆ 人は平均「3件」見て家を決める
◆ マンションは管理組合や管理会社がしっかりしていればトラブルを防げる
◆「賃貸」のメリットは身軽に移動できること、デメリットは設備グレードが落ちること
◆「持ち家」のメリットは設備がいいこと、デメリットは天災リスク
◆「南向き」にこだわらなくていい
◆「高齢」になると借りにくく、更新しづらい
◆ 部県は「居住価値」を見る
この本の中盤では、「持ち家についての話」および「住宅ローンで家を買う超・基礎」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 家の買い方は新築と中古で異なる
◆ 「中古」は値段交渉しやすい、とくに8月と12月は家の底値
◆ 登記簿面積で50㎡以上で節税できる(住宅借入金等特別控除)
◆ 2021年の税制改正で「40㎡」に緩和されたが、条件付きなので注意
◆ マンションと戸建てのどちらがいいかは、個人の優先順位次第
◆ マンションはセキュリティ、近隣との人間関係、防火性、管理面の手間などで優位
◆ 住宅ローンで借りられる金額は年収の5倍
◆ 住宅ローンを返せる金額は借りられる金額とは違う、家賃と同額程度の返済金額に
◆ リバースモーゲージやリバースモーゲージ型ローンという選択肢もある
◆ 住宅ローン審査ポイントは、➀80歳までに完済、②他のローン無し、③クレジットカードのキャッシング枠無し、④携帯電話・公共料金の滞納歴無し、⑤健康状態が良好
◆ ネット銀行は審査が厳しい
◆ 非正規雇用やフリーランスなら「フラット35」ならローンを組みやすい
◆ 住宅ローン仮審査を通っていると買い手として優先されやすい
◆「ボーナス払い」はやめたほうがいい
◆「住宅ローン特約」は絶対つけたほうがいい
◆ 住宅ローンには、「本人確認のための書類」「収入確認のための書類」「物件確認のための書類」の3本柱を提出
本書の後半では、「売却についての話」が記載されています。住宅は「買う」よりも「売る」ほうが難しい、と著者の日下部さんは言います。売却のポイントは以下の通り。
◆ 家を売るには不動産さんに仲介を依頼する、複数の会社に依頼できる
◆ 専属専任媒介契約や専任媒介契約という方法もある
◆「現況で売る」か「きれいにして売る」か
◆ 価格は「値引き」されてもいいようにつける
◆ 売れる時期は「12月中旬までに売り出す」のが理想的、次は「2~3月」
◆「3ヵ月」で売れることを目指す
◆ 買い替えは、➀売り先行型、②買い先行型、③売り買い同時進行型の3パターン
◆ 物件サイト掲載は最大5社までに
ここまでが、住宅のプロである日下部理絵さんの解説です。宅地建物取引士、マンション管理士という専門家であり、管理会社勤務、相談員、調査員、試験委員、セミナー講師、マンション住民、分譲マンションの買い替え、不動産投資家という様々な立場で住宅に関する実務を経験してきたオールマイティのプロならではの「分かりやすい」かつ「網羅的な」解説は、すべての疑問が一気に解決してしまうレベルの高さです。
私も30年以上前に宅地建物取引士(当時は「宅地建物取引主任者」と呼称)の資格を取り、東京都での登録更新を続けていて、もともと銀行員でしたので住宅ローンの仕組みや審査基準も熟知しています。
また分譲マンションの購入2回、売却1回(買い替え含む)という経験もしています。不動産会社への出向4年間、在来軸組み工法の戸建て住宅用構造材を専門とする木材トップメーカーに5年半勤務の経験もあります。
正直なところ、住宅に関してはセミプロくらいは知識があると思っていましたが、この本を読んで、ここまで幅広く明確に分かりやすく説明されていることは驚きでした。家に関する知識に不安がある人はもちろん、専門家でも知っていそうで正確に知らないことがいくつも出てくるので、ぜひ一読をお薦めします。
この本の最後は、元国税専門官ライターの小林義嵩さんが、「家にまつわる税金と特例の話」を解説しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 購入時は、住宅ローン控除、すまい給付金、住宅取得等資金贈与の特例など
◆ 所有時は、固定資産税の軽減措置
◆ 売却時は、3000万円の特別控除、軽減税率、買い替え特例、損益通算など
本書の「あとがき」では、著者ふたりがそれぞれ、リアルなエピソード(失敗談)を披露していて、親近感を感じると同時に、住宅の奥深さや売買の難しさを実感します。
ぜひ一生分の家の話が全部わかる本書を最後まで読んで、住宅を賃貸、買う、売るときに不安なく行動できるようになってみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2566日目】