湯沢雍彦氏は、東京都立大学を卒業後、東京家庭裁判所調査官、お茶の水女子大教授などを経て、現在はお茶の水女子大名誉教授だ。専攻は家族法社会学で、家族問題に関する多くの著書がある。
本書は、平成に入ってからの25年間で、私たち日本人の家族のあり方がどう変わったのか、詳細な統計データと豊富な図表および、身の上相談、家裁事例などから、家族をめぐるあらゆる変化を欧米との対比で描き出している。
具体的な家族をめぐる問題としては、生活水準、失業率、世帯構成、親子関係、少子高齢化、介護、児童虐待、結婚・離婚・再婚、出産、葬儀など多岐にわたる。
携帯電話の急速な普及や 「オレオレ詐欺」 の増加、就職氷河期とニートの増加、禁煙やアルコール依存症の低下など、明暗さまざまな変化が起こっている。
本書の構成は以下の通りで、かなり網羅的に家族問題を扱っている。
1.時の流れー暗い動き・明るい動き
2.大規模統計から見た変わり方
3.家庭裁判所事件の動きから
4.変わってきた身の上相談
5.一般夫婦の人間関係
6.離婚になる夫婦のいきさつ
7.親と子のつながりの深まり
8.児童虐待と子の救済
9.特別養子と真実告白
10.家庭の内側
11.社会とのつながり
12.少子化克服のための生活改革
13.あとがき
14.注
15.家族問題から見た年表(平成元年~25年)
本書は統計データに忠実に、事実を分析しており、客観性が確保されていることと、平成に入ってから加速している動き(トレンド)を的確に捉えている。
世帯構成の中で、単独世帯(単身世帯)が急激に増加しているのは、最も大きな潮流のひとつだろう。消費活動をはじめ、国民経済に大きな影響を与えてきている。
また、結婚をめぐる変化も見逃せない。晩婚化、非婚化、離婚の増加がいっぺんに起こり、単独世帯の増加に拍車をかけている。高齢化と平均寿命の増加は、死別という形で独居老人を急増させている。
著者の経歴から、家庭裁判所における事例を挙げて、動向を分析している点も興味深い。裁判事例は社会の鏡でもあり、家族問題の大きな傾向が把握できる。
平成に入ってから早くも四半世紀が過ぎた。社会の変化は早く、激しくなってきており、今後の変化の方向を予測する上で、本書はきわめて有効だ。
ビジネスパーソンはもちろん、主婦や高齢者も含めて全ての日本人に読んでほしい一冊だ。ぜひ推薦したい。