「これから人口が減少していくのに、タワーマンション(超高層住宅)やオフィスビルを次々と建設しても大丈夫なのか」と問いかけ、首都圏や大阪、名古屋などの主要都市で長大なクレーンが林立する開発風景や、地方都市では中心市街地から離れた郊外の農地が宅地に変わり、一戸建てやアパートが無秩序に広がっている様子を見て、違和感を感じる人も多いのではないかと問題提起をしている本があります。
本日紹介するのは、2017年4月に部横断的な調査報道チームを立ち上げ、都市問題を調査報道してきた日本経済新聞社が書いた、こちらの書籍です。
日本経済新聞社『限界都市 あなたの街が蝕まれる』(日経プレミアシリーズ)
この本は、市街地再開発や、老朽マンション、コンパクトシティーなどの取材を通じて、都市問題には合成の誤謬が凝縮されていることを示している書です。
本書は以下の4部構成から成っています。
1.タワマン乱立、不都合な未来像
2.マンション危機、押し寄せる「老い」の波
3.虚構のコンパクトシティー
4.脱・限界都市の挑戦
この本で述べている「合成の誤謬」は、再開発を通じてタワーマンションが乱立するのは、デベロッパーにとっては収益性が高く、自治体は住民を一気に増やせるからだし、コンパクトシティー政策を掲げながら郊外の開発規制を緩和しているのも住民を呼び込んで税収を増やすことを優先しているから、という個々の立場は経済合理性を追求している結果、というのが出発点になっています。
一見、それぞれの立場では経済合理性を追求していて正しいものの、全体としてみると都市の拡散やムダな投資につながり、長期的には国全体で「都市のスポンジ化」が進んでしまうという荒廃への道をたどることになってしまうのです。
本格的な人口減少と超高齢社会の到来という潮流の中で、拡張し続ける都市の現状に大きなギャップを感じ、「限界都市」というコンセプトで、この本では以下の問題を、調査データとともに明らかにしています。
◆ タワーマンションの乱立における負の側面(小学校の不足、複合的な日影問題)
◆ 市街地再開発事業におけるタワーマンション乱立と補助金への依存
◆ 公共性がかすむ再開発のあり方
◆ 老朽マンションの大規模修繕に積立金の不足
◆ 管理組合を食い物にする悪質業者の存在
◆ 老朽団地が押し下げる地価
◆ 空き家予備軍の破壊力
◆ 虚構のコンパクトシティー
本書の後半では、「脱・限界都市」の挑戦として、ユーカリが丘の事例や団地再生の案、さらにドイツにおける空き家再生などの成功例を紹介しています。
また、人口が減っていくことを前提とした都市のありようを考え、例えば自然資本への投資で都市の価値向上を図ること、公共施設の統廃合など「引き算」の政策も必要になる、と指摘しています。
あなたも本書を読んで、今後の日本における「限界都市」について、しっかりと考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!