書評ブログ

『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』

「人々の絆」や「隔たりのない社会」といったものが、日本人の長寿に貢献してきた、と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、ハーバード大学公衆衛生大学院社会行動科学部学部長・教授イチロー・カワチさんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

イチロー・カワチ『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』(小学館101新書)

 

 

この本は、戦後わずか30年で、先進国で最下位だった平均寿命を世界トップにした日本の健康・長寿の要因にアメリカが注目し、著者のイチロー・カワチさんに「社会と健康」という健康格差論の授業(ハーバード大学大学院)を任せ、そのエッセンスをまとめたものです。

 

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

 

1.日本人はなぜ長寿なのか

 

2.経済格差が不健康の源

 

3.格差是正のターニングポイント-教育と仕事と健康の関係

 

4.健康に欠かせない「人間関係」の話

 

5.社会全体の健康はこうして守る

 

6.果たして、人の行動は変わるのか

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「おせっかい」など隣近所を信頼し、思いやる気持ちこそが、人々の健康を支えてきたと言っても過言ではありません、と述べています。

 

 

世界中が高齢化に向かって加速する中で、日本が向き合う健康問題への答えは、世界の処方箋にもなるという問題意識で著者は研究を進め、パブリックヘルス(公衆衛生)、中でも「社会疫学」がこの問題解決に大きく貢献できる、と記しています。

 

 

著者が研究する「社会疫学」の結論は、「問題を川上から解決する」という手法です。病気になってから救命処置をする「医学」下流に例えられるのに対して、上流での対策は、病気の予防や病院から出た後の生活のケアを通じて、健康な生活の土台をつくるものです。

 

 

つまり、人々の病気や健康となる要因を考える上で、人々を取り巻く環境や社会のありようまで広げて考えてみようというのが「社会疫学」です。

 

 

本書によれば、その人が置かれた社会経済的状況によって、住む家や食べ物、医療へのアクセスなど、健康状態を左右する要素が決められています。

 

 

興味深いのは、格差が大きい社会は、所得が高い人の健康にも影響を与えることです、格差がある社会では、貧しい人だけでなく、お金持ちの人も含めた、人々全体の健康状態に影響を与える可能性があるのです。

 

 

日本は、他国に比べ、社会の結束力が高く人と人とが強い信頼関係で結ばれていることが、日本が世界トップクラスの長寿国である理由のひとつになっている、と著者は言います。

 

 

なぜ人とのつながりが強いと健康になるのかについて、大きく以下の3つのメカニズムがあると言われています。

 

 

1.人とのつながりがその人の行動を決める(禁煙や野菜摂取など)

 

2.人と交わるだけで健康になる

 

3.人とのつながりから生まれる様々な支援(ソーシャルサポート)が健康に影響を与える

 

 

 

この本の後半では、パブリックヘルスで、社会全体を健康にするのに大切な考え方として、以下の5つを紹介しています。

 

 

1.病気は徐々になるものであって、「今日」からなるのではない

 

2.大多数の「中リスク」の人たちに多くの患者が潜んでいる

 

3.リスクの高い人たちに働きかけるハイリスクアプローチでは社会全体に対するインパクトは小さい

 

4.ちりも積もれば山となるポピュレーションアプローチで、小さな変化が社会全体に大きな成果を生み出す

 

5.病気のリスクは相対的なもの(確率の問題で絶対的な基準値はない)

 

 

 

さらに本書の最後では、上流アプローチとしての社会の「仕組み」として、次の3点を挙げています。

 

 

◆ 消費者だけでなく、「生産者」に対しても働きかける

 

◆ 個人を治療するだけでなく、肥満を生み出している環境も「治療」していく

 

◆ 業界を超えた連携を図っていく

 

 

 

あなたも、この本から「健康格差」の真の要因を学び、日本の社会の良い点が失われないように、できることをしてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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