「意識を失い、目を開けることも話すこともできなくなった患者さんであっても、聴覚だけは残っています。」と説明し、アメリカと日本のホスピスで、多くの人の心を癒してきた音楽療法士が綴った、感動のノンフィクションがあります。
本日紹介するのは、昨日に引き続き、ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士の佐藤由美子さんが書いた、こちらの書籍です。
佐藤由美子『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)
この本は、19歳の時にアメリカのノースカロライナ州の大学に留学し、その後、バージニア州にあるラッドフォード大学の大学院で音楽療法を学び、インターンを経て26歳で、ホスピスを専門とする米国認定音楽療法士となった著者が出会った患者やその家族のエピソードを綴ったものです。
本書は、著者の佐藤さんが出会って、音楽療法やケアを実施した、以下の10名(とその家族)に関する物語から成っています。
1.最期まで残る感覚-きよしこの夜
2.さよならのメッセージ-What a Wonderful World
3.言葉にできない想い-Love Me Tender
4.なにが私たちを生かすのか-輝く日を仰ぐとき
5.死という鏡-千の風になって
6.忘れられない恋-Unforgettable
7.悲しみとの向きあい方-椰子の実
8.子どもと大切な人の死-The Rainbow Connection
9.人生最後の旅-Over the Rainbow
10.生きるということ-花~すべての人の心に花を~
それぞれの物語は、涙なくしては読めないほど、リアルで感動的なエピソードです。
とくに、死を迎える人の心の揺れや、音楽療法によって変化していく気持ちが、手に取るように伝わってきて、胸がいっぱいになる思いを何度も感じました。
そして、音楽が果たす役割が、いかに大きいかということも、実感として理解できます。
この本は、昨日紹介した『死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること』(ポプラ新書)の前著で、著者の佐藤さんが初めて書いた本になります。
新刊の新書に比べると、本書は、エピソードが10と少なく、それぞれのストーリーがより細かく、詳しく書かれているのが特徴です。
セラピーで弾いた曲の歌詞や、その時の患者さんの思い、音楽が果たした役割の大きさが、より具体的に描かれていて、新刊新書とは違った意味での「読み応え」があります。
10のエピソードの詳しい内容については、ここでは敢えて書きませんが、ストーリーの中で、私の心に響いた「著者が紹介するメッセージ」を、以下に挙げておきます。
◆ 「生」と「死」は、コインの裏表のようなもので、ホスピスで多くの人の「死」に接するということは、さまざまな人の「生」を見ることに等しい
◆ この病気に感謝しているんだ
◆ 大切なのは人との関係だ、もっと息子と一緒に過ごせばよかった
◆ 愛することができる年齢に達している子どもなら、悲しむこともじゅうぶんにできるのだが、そのことは意外に知られていない
◆ 昔好きだった音楽を聴くと、当時の出来事や、そのとき感じた気持ちが鮮明によみがえる
◆ 音楽は私たちの記憶を自然に刺激してくれる
◆ 音楽療法士にとって、音楽は道具箱の道具なんだ
◆ 「死」は、人生における最後の「旅」です
また、死やグリーフ(悲嘆)について書かれた、世界的に有名な精神科医エリザベス・キューブラー・ロスの遺作『永遠の別れ』(日本教文舎)を本書の中で紹介しています。
あなたも本書に記された、思い出の音楽にのせてつむがれる心あたたまる10篇のストーリーを読んで、「死」と「生」について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を