書評ブログ

灰谷健次郎・石川分洋『アジアを歩く』(枻文庫)

灰谷健次郎氏は、『兎の眼』、『太陽の子』、『天の瞳』など、次々と子供を主人公にした小説で、多くの人々を感動させてきた人気作家だ。平和運動にもさまざまな形で参画して、世論をリードしてきた。

 

灰谷氏は健康人間を自負していたが、ガンに冒されて72歳の若き命を2006年11月に亡くした。多くの友人に惜しまれ、アジアが好きだった灰谷氏に向けて、著名人たちが追悼文を寄せた。

 

本書は、仕事が縁で長く親交のあった写真家の石川文洋氏が多くのアジア旅行写真を提供して、かつての灰谷氏との共著を再構成すると同時に、寄せられた追悼文を掲載して出来上がったものだ。

 

採り上げられているアジアの国々は以下の通りで、いずれも灰谷氏が愛してやまない地ばかりだ。

 

1.タイ
2.ベトナム
3.フィリピン
4.ミャンマー
5.ラオス

 
6.ネパール
7.中国
8.インド
9.パラオ・ペリリュー

 

灰谷氏は、アジアの玄関とも言える沖縄が大好きで、『太陽の子』には沖縄に関する記述がたくさん出てくる。また、一時は沖縄で暮らし、アジアを想い、多くの共通点を感じていたようだ。

 

写真家の石川文洋氏は、沖縄県那覇市首里の生まれ、沖縄育ちで、灰谷氏が沖縄を訪れて知り合って以来、親交を深めた。

 

本書の写真(石川氏撮影)からも、灰谷氏の文からも、アジアのそれそれの国に対する優しく、温かい想いが伝わってくる。灰谷氏が亡くなってから早、8年になろうとしている。

 

心からご冥福をお祈りするとともに、追悼の書である本書を、多くのアジアを愛する方々に、国境を越えて推薦したい。