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太田芳徳『リクルートを辞めたから話せる本当の「就活」の話』(PHPビジネス新書)

太田芳徳氏は本書タイトルにもある通り、リクルートに勤務し、採用広報の営業、商品企画、人事組織コンサルティングを行っていた人事・採用のプロだ。

 

現在は、その経験を生かして独立し、株式会社バンゾーの代表として、人事運用コンサルティングや、若者・主婦・高齢者向けにキャリア開発サービスを提供している。

 

本書は、2012年10月から2013年3月にかけて株式会社リクルートキャリアにて行った「特別就職講座」の内容と実績を 紹介したものだ。著者のリクルート勤務時代の最後の仕事と思われるが、会社を辞めたから言える本音の内容だ。

 

私も大企業や中堅企業で、数多くの人材採用や研修の仕事を経験しているので、本書の内容が秀逸であることがよくわかる。とくに、現在、企業が採用したい人材の要件は、まさにそのものズバリという感想だ。

 

本書で述べられる具体例、「特別就職講座」とは、中堅下位大学の学生(大学3年生)が大手企業の採用試験を受け、内定を得るプロジェクトだ。2013年春に受講生4名全員 (いずれも中堅下位大学の女子学生)が大企業 (大手地銀や大手生保)から内定を獲得した。

 

本書によれば、就活で最も大切なことは、「突き抜ける経験をすること」だ。特別就職講座で教えていることは、一言でいえば、「突き抜ける経験をせよ」ということだ。

 

具体的に言えば、問題解決をしながら、諦めずに成果を出すまで自律的に行動し続けることを指しており、「論理的・構造的にまとめ、書く・話せるようになれ」ということだ。問題解決をしていくための論理を磨くことが必要なのだ。

 

それは、企業が採用したい人材が次の3つの力を持った学生だからだ。

 

1.現場で起こっていることに対峙できる問題解決力
2.問題解決を支える論理力
3.実際に行動に移せる自律行動力

 

私もまったく同感だ。では、こうした力をつけるための「突き抜ける経験をする」にはどうすればよいのか。著者は講座で、アルバイトの現場で一番になることを目標として掲げ、PDCAを回すことで諦めずに実行し成果を上げることを求めた。

 

こうした経験を積んだ女子学生4人は、面接で経験と成果を自信を持って論理的に語り、見事に大手企業の内定をゲットした。

 

就活に取り組んでいる大学生、大学のキャリアセンター職員、企業の人事・採用担当者の全てが読むべき優れた本だ。ぜひじっくりと読み込むことを薦めたい。