書評ブログ

印象に残る自分「プレゼン」術とは?

印象に残る人と残らない人との違いはどこのあるのでしょうか。人間と人間の関係は第一印象で作られるといってもいいと言われています。

 

一度で決める自己紹介の方法など、他人に忘れられない技術としてのプレゼンテーションのスタイルを提案している本があります。そこで今日、紹介する本はこちらです。

 

藤原和博『自分「プレゼン」術』(ちくま新書)

 

この本は、1955年生まれ、東京大学経済学部を卒業してリクルートに入社し、東京営業統括部長などを経て年俸契約の客員社員「フェロー」制度の第1号として半独立した藤原和博さんが自らの経験をまとめた書です。

 

一度で決める自己紹介の方法、捨てられない名刺や挨拶状の作り方、必ず通る企画書の書き方、成功する接待・失敗する接待、外国人との交渉法など、著者の20年に亘る実践経験をもとに、「他人に忘れられないプレゼンテーション」のスタイルを提案しています。

 

この本の構成は以下の5部から成っています。

 

1.第一印象-たった一枚の名刺から
2.常に印象的な人であるために-ファックスや年賀状から始まる「社交術」
3.印象的なプレゼンテーションの実践-四行で自分をアピールすること
4.物語るころ-プレゼンテーションの出来を決める三つの法則
5.自分の放送局をつくる-デジタル音痴でも放送局(ホームページ)を運営できる

 

日本の学校教育では、小中学校の義務教育課程を通して、自分の想いを相手にきちんと伝える技術、つまり「プレゼンテーションの技術」については取り立てて教えることをしていません。

 

いったいそれはなぜなのでしょうか?欧米では、小中学校から自己表現(プレゼンテーション)と討論(ディベート)の訓練をする授業があり、いかにして、異なる価値観や宗教観を持った他人に、自分の想いを伝えるかというコミュニケーション技術を幼い頃から磨いています。

 

実際に欧米諸国では、髪や目の色もそれぞれ違うし、同じキリスト教の流れであっても、プロテスタントとカトリックでは世界観が違います。陸続きのヨーロッパ各国や移民で成立したアメリカでは「多様性」が当たりまえの日常です。

 

一方、日本では長い間、顔かたちも髪や目の色も似通っているし、「同じ釜の飯を食っている」仲間はみな、同じような価値観・世界観を持ち、人生観を含めて語らずとも分かるものだという常識が支配していました。

 

男は高倉健に代表されるように「沈黙を金」とし、女は「三歩下がって控えるのを美徳」として、「プレゼンテーションをする個人」などは、「はしたないものだ」と教えられてきました。

 

現代は「個人の時代」であるにも関わらず、日本人のプレゼンテーション下手が治らないのは、皆さん自身の資質に問題があるのではなく、日本特有の教育環境に問題があったと言えます。要は「訓練されていない」というだけの話です。

 

そういう問題意識の下で、著者の藤原さんは、中学生や高校生でも分かるように、「いかにして自分を表現して他人と交わり、社会の中に居場所を作っていくか」という「社会的な技術の教科書」として、本書を書いています。

 

「自分の想いが伝わらない」、「企画が通らない」、「自分のことがどうも分かってもらえない」という悩みを持った人は多いと思います。就職を目前にした学生、お客さんに新商品のプレゼンをしてぜひ買ってもらいたい営業マン、会社の取締役会で人事政策を提案する企画担当者、議会に条例を通さなければならない地方自治体の官僚など、世代を超えて多いでしょう。

 

人生の日常は、こういった「分かってもらえない」悔しさの連続ではないでしょうか。こうした中で藤原さんは、自らの経験で成功した「プレゼンテーション技術」を具体的に紹介しています。私が感銘を受けて、そのうちいくつかは実践しているものを以下に紹介します。

 

1.相手が欲する情報を一枚にまとめる
2.個人のロゴを持とう
3.四行で自分をアピールする
4.目立つキャッチコピーの実践
5.本を一冊出してみる

 

6.プレゼンテーションのタイトル・立場・リードを重視する
7.マイナス部分を語るとエネルギーが入ってくる
8.自分を語る目次を作る
9.価値観を共有できる他人を探す
10.職場以外で一緒に仕事をしたい人を探す

 

藤原さんが紹介する手法の中でも、実際のプレゼンテーションの実例を紹介して分析した部分はとくに参考になります。タイトルや小見出しを決めることの大切さや、「始めよければすべて良し」という「リードの重視」はまさにその通りです。

 

著者は「プレゼンテーションの出来を決める3つの法則」として、以下の3点を提唱しています。

 

1.始めよければすべて良し(リードの部分で勝負は決まる、体験から入れる人は強い)
2.マイナスイオンの法則(自分の失敗を静かにつぶやくプレゼンは心に染み入る)
3.聞いている人が他人に語りたくなる話を
(思わず第三者に語りたくなってしまう「何か」が隠されていること)

 

この本ではページ数を割いて具体的に述べているのが、この「プレゼンテーション3法則」ですが、『父生術』(日本経済新聞社)の著者として藤原さんが行った講演「子は父を育てることがある」を題材としています。さらに詳しく知りたい方は以下の書も読まれることをお薦めします。

 

藤原和博『父生術』(日本経済新聞社)

 

情報通信革命によって、「個人」が情報発信ができる時代になりました。個人としての「ブランディング」を行い、ホームページやブログなどで情報発信をするチャンスが全ての人にあります。

 

皆さんも本書で紹介する「プレゼンテーションの技術」を参考に、個人の「ブランディング」と「情報発信」をしてみませんか。

 

では、今日もハッピーな1日を!