書評ブログ

『Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係』

「Z世代は孤独だ」「若者は人間関係が希薄だ」――そんな通説を覆すデータがここにあります。
本日紹介するのは、1981年設立のシンクタンク「博報堂生活総合研究所」が、30年前と同じ設計で実施した “若者調査” をもとに、令和のZ世代とその親世代の関係性を徹底分析したこちらの書籍です。

博報堂生活総合研究所『Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係』(光文社新書)

この本は、「Z世代と親世代の密接すぎる関係」という現象を、豊富なデータとリアルなチャット記録で明らかにした、まったく新しい “家族社会論” です。
Z世代の6割が「親と共通の趣味を持つ」、男子の3人に2人・女子の8割が「親から誕生日プレゼントをもらう」、女子の5割が「母親と服を共有する」――。
こうした事実から見えてくるのは、“親友よりも母親に本音を話す” 時代の若者像です。

本書は以下の7部構成から成っています。

1.若者論のウソを見破る「超」データ

2.近く、親しく、密すぎるZ家族の姿

3.令和の親は絶対的味方!?「メンター・ペアレンツ」プロファイル

4.大公開!Z家族のリアルなチャット画面

5.Z世代の上司論──なぜ若者は職場で本音を話さないのか?(金間大介氏)

6.令和の若者がつるむ「ローリスク仲間」

7.Z世代の緊密な関係の先にある課題──若者が「外」に向かう社会へ(星友啓氏)

本書の前半では、「若者論のウソ」として、Z世代のリアルな実態をデータで示しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ Z世代の幸福度を支えているのは “家族との絆” である

◆ 若者の孤立よりも深刻なのは「中高年の孤立」

◆ SNSでのつながりよりも“家族との密な接点”が心の安定を生む

◆ 「親友」より「母親」に価値観を影響されるZ世代

◆ “親と過ごす時間” が、Z世代にとっての “生きがい” の源泉

この本の中盤では、「メンター・ペアレンツ」と呼ばれる新しい親像を描きます。主なポイントは次の通りです。

◆ 現代の親は “支配者” ではなく “伴走者” として子どもを導く

◆ LINEで気軽に相談し、服を共有する “フレンド親子” が増加

◆ 親の影響を受けながらも、自分の価値観を育てるZ世代のバランス感覚

◆ 「親と近すぎる関係」は依存ではなく、“信頼関係”の表れ

◆ 親世代がアップデートされた「デジタル共存型の家族関係」

本書の後半では、Z世代の社会適応と今後の課題を掘り下げています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 職場で本音を話さないのは、“安心できる関係” がないから

◆ “ローリスク仲間”というゆるいつながりで安心を確保

◆ 家族に安定を求めすぎると、“外への挑戦” が抑制されるリスク

◆ 星友啓氏が語る「親離れ・子離れのバランス」の重要性

◆ 企業はZ世代に “メンター的上司” を提供できるかが鍵

本書の魅力は、感情論や世代論ではなく、膨大なデータとリアルな事例から “Z世代家族”
の構造を描いている点にあります。とくに、親子のチャットを分析し、「愛情・共感・助言」が絶妙に共存しているやりとりを提示している点は圧巻です。

著者チームはこう語ります。
「Z世代は、“家族の中に社会をつくる世代” である。」

家族との距離が近いことを “過保護” とみなす時代は終わり。
それはむしろ、“信頼と安心をベースにした新しい家族のかたち” なのかもしれません。

企業・教育・地域がZ世代とどう向き合うか――そのヒントが凝縮された一冊。
家庭から社会へ、つながりの質を問い直す時代の必読書です。

ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のYouTubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

https://www.youtube.com/channel/UCIwJA0CZFgYK1BXrJ7fuKMQ

では、今日もハッピーな1日を!【3907日目】