「目の前の人を大事にする」という、カフェからはじめる人を手段化しない経済を提唱している本があります。
東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経て、ベンチャーキャピタルの創業に参画した後に独立、生家の西国分寺にシェアハウスを建設して、その1階に「クルミドコーヒー」をオープンさせた影山知明さんが書いた、こちらの書籍です。
影山知明『ゆっくり、いそげ』(大和書房)
この本は、水泳平泳ぎの平井伯昌コーチが北京オリンピックの決勝前に北島康介選手にアドバイスした「勇気を持って、ゆっくり行け」という言葉に感銘を受けた著者が、「ゆっくりいそげ(フェスティナ・レンテ)」をモットーにカフェ経営を実践している「暮らし方」を紹介している書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.1キロ3000エンのクルミの向こうにある暮らしを守る方法
2.テイクから入るか、ギブから入るか。それが問題だ
3.お金だけでない大事なものを大事にする仕組み
4.「交換の原則」を変える
5.人を「支援」する組織づくり
6.「私」が「私たち」になる
7.「時間」は敵か、それとも味方か
長野県東御市という日本一のクルミの産地との提携について紹介しています。
お互いにメリットのある複数車線での交換というコンセプトで、顔が見える者同士の価値の交換です。
また、カフェをオープンする資金の出資金についても、クルミド債を発行して利子はコーヒーで支払うというユニークな応援の仕組みを著者は考えています。
すべて効率や経済合理性だけで、どこの駅前もチェーン店のカフェばかりになっている現状に、問題提起をしているようです。
この本では、支援し合う関係について考察し、お金だけがすべてではない価値観を、様々な角度から問いかけています。
そして著者の影山さんは、世の中で大事なものは何なのか、という問いに対する次のような仮説を、西国分寺のクルミドコーヒーから証明しようとしています。
◆ お金のために働くこと、お金のための経済をやめる
◆ お金以外の価値の大事さを見直す
◆ 一つひとつの仕事に、時間と手間とをちゃんとかける
◆ 自分の目的のために目の前の人を、利用するのではなく支援するために力を尽くす
◆ こうした経済のありようは、お金以外の価値を含めた「価値の総和」を大きくする方向に寄与する
◆ また、人の可能性を引き出し、仕事の内実を高め、結果として長い目で見ると、世の金銭的価値そのものを大きくする
そして最後に著者は、「時間を味方にして生きる」ことについて語っています。
京都・龍安寺にある蹲踞(つくばい)で有名な「我唯足知(われただたるをしる)」という深いメッセージを続いて紹介しています。
そして20世紀初頭のパリのカフェに、ピカソやヘミングウェイなどが集い、文化が芽吹き、時代をつくるようにになっていたのは何故なのか。
実は、因果関係は逆で、「偉大な人物」がカフェに集っていたのではなく、そこにカフェがあったから、そこに集った人たちが後に名を知られるようになった、ということです。
飯田美樹さんの『Cafe から時代は創られる』に詳しく書かれています。
あなたも本書を読んで、「ゆっくり、いそぐ」という生き方について、考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を